雑多な
ヨカ
たぶん、前世
電灯と街の明かりが眩い夜。
なんてことない道の端で、私は泣いていた。
そして目の前にいる彼も。
「お、おぉ?」
「えぇ…」
どちらも困惑気味。あたりまえだ。初対面だもん。むしろなんで泣いてんのかわからない。多分向こうもわかってない。
ただすれ違っただけ。だけどなんか「あれ?」と思って、振り向いたら彼も振り向いていて。そしたらもう涙。意味がわからない。
よくわからない莫大な感情が渦を巻いて、完全に私を置き去りにしている。
「へへっ」
「ははっ」
お互いよくわからない愛想笑い。人通りが少なくてよかった。今の私たちは完全に不審者だ。私だって微妙に怖いわ。
でもなんだろう。こういう展開、私知ってる。自覚が皆無なところがアレだけど。なんかこう、アレじゃない。前世。前世のなんか。
向かいの彼も、なんかこう、「あれ?」みたいな。完全に言いあぐねてる感じが同じことを思っているのを察せさせた。気が合うわねやはり前世?
ということで。とりあえずタイミングを計りながら、すっごい不審げな「君の名前は?」を言うなどした。お約束よね。
話したところ、彼もよくわからないらしく。たぶん前世の恋人だか兄妹だか相棒だか、そんな感じのアレなんじゃない?という全く不明瞭な感じに落ち着いた。
まぁ、理性が「何言ってんだ」って言っても感情が「こいつはヤベェ」って言ってんだからしょうがない。
そんな感じで私たちは付き合うことになった。やはりというかなんというか、妙にお互いタイミングがあったり既視感が襲ってくることがあった。
でもやっぱり喧嘩なんかもあったりして。
その結果。足元には血塗れの彼がいて、私の手には包丁がある。
だから、多分。
たぶん私たち、前世の敵だったんだと思う。
残念。
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