雨と夜

 雨が降っている。

 視界の端にある黄色い傘に、小気味よい音が降ってくる。

 辺りは夜に沈んでいる。

 どこかひっそりとしているようで、きっと何かが潜んでる。

 マスクのせいで眼鏡が曇る。

 視界の上方は白いもやで覆われている。

 暗い視界は雨でかすみ、もやに覆われ、私に何が見えていると言うんだろう。

 電灯だけが幻想的に、虹色の光を発している。

 それだけが私の頼りで、夜の世界への道標。

 すれ違った人をふと見れば、うまい具合にもやがかかって、首から上が不明瞭だ。

 傘を持った首無し人間。

 振り向いたら消えていたりしないだろうか。

 虹色の灯に導かれ、冷たい足をふらふら進める。

 視界の端の黄色はずっと、小気味よい音を受け止めている。

 雨が降っている。

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