第296話
ビクビクオドオドしながら一日を過ごして。
参戦した村民の……というか内部からの洗い出しのようなものは無かった。
…………あれれ? おかしいなー?
名探偵ばりのフリを発揮して、実はぶっ飛ばした奴らと第二王子殿下の遣いとやらが別人説を推してみた。
その日の晩の雑用を進んで受けて、食事回り等で野営地をウロウロとした結果。
顔をバッチリと腫らした一人を含む、『お前らとは違うんだよ』的な四人組をそれぞれ発見。
間違いない。
着ているローブから、ダメージを受けた箇所……そもそも動けなかったであろう状況からして、第二王子殿下の遣いとやらは一戦を交えたあの黒ローブ共で確定だろう。
それだけに不可解な点がある。
恐らくは第二王子殿下の刺客というのは本当なのだろう。
手紙というのが本当なのかどうかは分からないが、万が一の保険を持っていた可能性はある。
伏せ札の一枚を切って身の安全を買ったのか……。
あるいは齧りついてでも熟す必要がある何かがあるのか。
『嘘』の
……キナ臭さ、半端ないってぇ……。
どちらにせよ別の管轄下での暗躍なのだ。
責任を問われるのは間違いがなく、その所在が偉い人である場合発生する『尻尾切り』は、自らの破滅を招くことになる。
これは奴らにとって本意ではない状況の筈。
だからこその論点ズラシ。
襲われたことを強調することによって、密使であるかのような振る舞いをしているが……。
そもそも御本人様が不在なのだから的外れもいいところだろう。
何しに来たの? は誰もが思っている。
目的は……この中? 軍内部の何かだろうか?
そこはサッパリと分からないが、怪しいと思っている点はまだある。
歩哨のルートだ。
本人達と……察知出来た俺にはハッキリとしていることだが、奴らは歩哨のルートを縫うように進んでいたのだ。
知っていた……あるいは知ることが出来た、と見て間違いないだろう。
歩哨のルートは大隊長がその場で決めている。
マニュアルの有無などは知りもしないが、なんとなく実戦派に見える大隊長からして個人的な意見が反映されている気がする。
加えて五人目が発見されていない件だ。
間違いなく包囲されていた……突破した側の意見なので『何を言うやら』なんだけど、発見されずに逃げられるだけの能力があったのかは首を傾げるところではあった。
――――しかし紛れ込んだのなら、頷ける。
奴らは俺の顔は確認出来ずとも、声と風体は確認している。
身近なところから……それこそ内情を知りたいだろう軍への首試験などの実施を求めていても変じゃない。
潜在的な敵なのは間違いないのだから。
……それをしないということは、内部を変に探られたくない……ということなんじゃないだろうか?
本来なら、明るみに出て来たせいで身動きが取り難く見える四人組。
大隊長は流石に分かっているのか、四人組を基本的にはバラバラに分けてコミュニケーションを取れないように上手くやっているが……。
内部犯が一人いるとなれば話も変わってくる。
逃げ切れたのか、潜り込んだのか……。
知っているのは奴らと俺だけ。
…………めんどくせぇ。
これで身バレするのはリスクがあるよなぁ……向こうの方が立場が上なのだから、こっちが何と言おうとも握り潰されるのが
かと言って内部犯の可能性を告げないのも収まりが悪い…………しかし告げたところで既に「考えていた」なんて言われたら言い損である。
あれれ? どちらの未来も真っ暗だよ? 夜なのかな? あれれれれれ?!
……ターニャさん! ターニャさん?! 村人の中にターニャさんは居られませんか?! お客様が困った方です! 是非とも処して頂きたい!!
割と考える時間が短く。
とりあえず見張りを買って出た二日目の夜は何も起こることがなく……。
そのまま行軍すること三日目。
早々にも遺跡……というか大峡谷に着きそうである。
そもそもそんなに遠くないのだし、必然と言えば必然である。
……あああああ?! このまま遺跡に着いていいのか?! 分かんないよお?!!
距離で言えば、遺跡から街までは馬で一日、徒歩で二日といったところ。
対策を取るなら早い方がいいだろう。
そもそも一兵卒の意見を聞いてくれるかどうかという問題もあるのだが……。
幸い……というか辛いことに、聞いてくれそうな偉い人の知り合いが居るっちゃいるんだよねぇ……。
待っていると言った以上、いずれは会う可能性が高い……出来れば生涯関わりたくないお貴族様に。
…………そちらも何故なのか……理由を知りたくてドキドキしているというのに……。
恋かな?
いや不整脈だな。
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