第210話
『違うだろ?! ラディタそは受けやん?! そんな女に現を抜かしてる場合か?! いい雰囲気出すなら相手を選んでくれ! ラストんが変な男と一緒に
『絶対に有り得ない……そんな可能性は存在しない! しかしラストん✕クウォリぐは認めねばなるまい。これは美味い。尊死。私っ、でも……身長差は絶対の要素やと思ってたの?!! もう私っ! 私がよう分からぐへへ』
『食品の新しい組み合わせの発見は革命。それは苺大福が証明しています。だから殉じる。それが
「ダメだ……こいつも腐ってやがる」
一番使わないと思っていたテーブルと椅子を使用している。
真っ暗だというのに本が読めるのは赤児が出す明かりのお陰です。
利用されているというのに赤児は嬉しそうだ……君、腐ってるわけじゃないよね?
樹木まで枯らすなんてとんだ禁書だ、必要な情報を抜き出したら焼くことを誓おう。
しかし書いてあるのは個人の趣味嗜好を全開させた何かだ。
……いやほんと、ただの日記だなぁ、これ……。
日本語で書かれているというだけで、内容は腐った日記で間違いない。
テーブルの上に積まれている本は既に六冊を越えている。
そしてここら辺が限界である。
……これ以上は……俺の精神にも異常を来たすかもしれないから……!
マジで何書いてんのこいつ? 登場人物がエルフらしいからまだ生きてる可能性あるじゃん、どうすんの? いざ顔を合わせたらまともに見れそうにないんだけど?
「何を煮詰めたらこんな魔女が出来るんだよッ……!」
想像より恐ろしい物が見つかってしまったよ…………ここ何処だっけ? 異世界? 本当に?
「――」
「何言ってんのか分かんねえけど、絶対違う。俺こんなの求めてないからね? そりゃ前の住人は喜んだのかもしれんけど……」
褒めてとばかりに本を指差す赤児に『ナイナイ』とジェスチャーで伝える。
うん、ナイナイしよな? 無いって意味でもあるけども。
なんか……もっとこう? 転生に関する記述とか、魔女と呼ばれるようになった由来とか…………なんならこの世界に落ちた愚痴なんかが載ってるんじゃないかと思っていたのだが。
こいつ幸せやで、間違いなく。
感情を吐き出しているという意味では、そういう物が見つかったと言えるけど。
でも思ってたのとちゃうねん。
えぇー……もうどうしよう? そろそろ本気で眠くなってきたし、あとは朝にするか?
本棚には何十という数の黒い装丁の腐るい本がまだまだ残っている。
死んだ目でパラパラと他人の日記帳(分厚い)を流し読みしていると、それまでのパッションを抑えた記述があった。
…………これは――
『ついに完成した。これで幾つめだろう? 嘘、ほんとは覚えてる。それでも口に出すことはしない。文字にも残さない。それが流儀だから。私はただひっそりと在る、それだけ。それでも……もし、もしこの文字を読める同志が存在するのなら、使ってくれていい。だから私は残す。次があると信じて。……ちょっと恥ずかしいけれど。本と本棚とベッドには保存の魔法を掛けてあります。地下への入口は無事に――』
「地下? 地下があるのか……ここ」
ふと呟いた言葉に、赤児が頷く。
……そういえば植物ですもんね? それに根っこは自由自在……。
なんか、思わぬ展開になってきたな?
流し読みをしていたのに何故この記述に気付いたのかというと……それが本来なら『存在しない日』だからだ。
2月30日。
四年に一度しか存在しない日だって珍しいのに、その翌日である……前世では。
なんとなく気になったのは転生者ならではの知識だろう。
ちなみに日記では一ヶ月を三十日に捉えてある。
二月が気になるような書き方だ。
こちらの暦がハッキリとしないので分からないが……少なくとも同志には伝わるように書いたのだろう。
しかし、もし木を隠すなら森の中を地で行ってるのだとしたら……魔女と呼ばれたこいつは中々の切れ者だと思う。
腐ってるのも間違いないと思うけど。
……うん、これが演技には思えないから……うん、間違いない、本物だ。
それ以外の記述はボリュームも増し増しで……むしろこっちを読めと言わんばかりだもん。
ちなみに2月29日はパッション全開でした、ここからが盛り上がるところって何だよ? 続き読めねえよ。
……全部読まずに済んで良かったなぁ~。
本をテーブルの上に積んで立ち上がると、赤児がついてくる。
どうやら本はもういいらしい。
「……なんだっけ? セフシリアだっけ? お前、ここに住んでた奴って……まあ知ってるわなぁ」
コクコクと頷く赤児に促されるようにベッドに近付く。
そこは本来、他人が覗く場所ではないのだが……。
埃を掻き分けてベッドの下を覗いてみる。
すると床下収納のような取っ手が見つかった。
「なるほどねぇ……」
なんか急に異世界転生してきたやん……。
勘弁して欲しい。
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