第116話
合格者は百五十人を越えた。
……結構多いな。
半分以上が残った運搬役一次試験、そういえば採用人数も知らされていない。
話の流れから察するに、結構な人数が採用されるとは思うけど……。
どうもダンジョンの攻略というのは
となると、それなりのパーティーがダンジョン攻略に参加することになるということで、運搬役もそれなりの人数が必要だろう。
それでも三桁ではあるまい。
ここから更に絞るとして……最終的に残るのは五十人といったところかな?
筋肉質な一次試験の合格者達に囲まれながら、二次試験は外でやると言われたので、ぞろぞろとギルドの外へ移動した。
冬だというのに絡みつく熱気から開放される。
外、最高。
通されたのはギルド横にある空き地だ。
不合格になった者も見物なのか付いてきて、野次馬と合わせ室内よりも人数が増えたギルド横の空き地。
いい見世物なのだろう。
……勘弁して欲しい。
気のせいか野次馬の中に知っているジト目があった気がするだけ余計に。
うんざりしながら座って待っていると、仰々しくやってきた傷男が声を張り上げて二次試験の説明を始めた。
「二つ目はどれだけ走れるかを見る! 用意した籠を持って……そうだ、籠を担いで走るんだ! 実際に荷物を持ってダンジョンの中を走ることもあるんだ! 出来ねえ奴は帰れ!」
……なんでそこで俺を見るんだよ。
逆恨みも甚だしいぞ。
二次試験は持久力のテストらしい。
籠を担いで街の外壁沿いを走れと言う。
用意された籠は三十個程で、具体的な距離は……知らされていない。
測定員が「いい」と言うまで走らされるとのこと。
おそらくは精神的なテストも含まれているのだろう。
意外と合理的だ……考えたのは傷男のパーティーじゃないと思う。
最初に名前を呼ばれたので、俺は第一走を走るようだ。
第一走を走る面々と共に籠を配る男の元にぞろぞろと移動した。
「おい、勝手に取るな。お前のはこっちだ」
適当な籠を取ろうとしたら、籠男に注意された。
……くそ、明らかに目ぇ付けられてんな。
こんなのどれでも一緒だろうという文句を飲み込んで、指定された籠の持ち手に腕を通す。
肉体強化魔法を発動しながら立ち上がろうとして気付いた。
…………え? おっっっも?!
肉体強化の二倍じゃ持ち上がらない籠の重量に、一次試験で使われた大きな籠を想起する。
これで走る?! こんなの誰も完走出来ないだろ……。
しかし確認するように周りを見渡せば、それぞれが苦心しながらもフラつくこともなく立ち上がっていた。
つまりあれだ。
……やられた。
チラッと確認するように籠男を見れば、他の受験者を気にすることなくこちらを見ている。
立ち上がれなかったり、フラついたりしたら、そこから難癖でも付ける気なのだろう。
そもそも走れるとは思っていまい。
――ムカつく。
身体能力強化の二倍も発動する。
重ね掛けした強化魔法がシナジー効果を発揮、肉体強化魔法の三倍でもかくやと思われる籠が軽々と持ち上がる。
驚いている籠男に笑顔で訊いてやる。
「スタート地点ってどこですかね?」
見てろよ? 絶対合格してやるからな。
外壁沿いの道には、所々にギルドの職員さんが立っている。
チェックポイント要員だろう。
さすがにそこまでは手が回らなかったのかギルド主体だが、俺にとったらありがたいことだ。
そこまで傷男のパーティーメンバーに担当されたら、真面目に走っているのにチェックされないという可能性もあった。
野次馬が結構な人数いるから無用な心配だったかもしれないが。
ランニングならお手の物である。
なにせ幼馴染の一人にこれが遊びだと思っている奴がいて、半日と言わずに付き合わされることがあったからだ。
途中からテッドやチャノスすら俺に押し付けてきたからな! 外勢はお前らの担当の筈なのに!
そんな過去もあって、魔法込みで走るのなんて苦にならない。
最近も大荷物で荒野をひた走るなんてこともしていたわけだし。
しかし都市と言われるだけあって、外周はそこそこの長さだった。
走っているうちに、いつの間にかトップ集団すら抜け出してしまったのだから、結構な時間を走ったと思う。
これは一周だろうと予想を立てていたのに、スタート地点に戻ってきた際に「いい」とは言われなかったことに驚いた。
まさかの二周である。
こちとら両強化の二倍を発動しているので割と余裕があるが、死にそうな顔で走っている他の受験者は大丈夫だろうか?
結構、心を折りにくる試験だなぁ。
二周目が終わった時にロン毛から「いい」という許可が出た。
俺が試験を突破すると同時に、棄権する受験者も大量に出た。
これは仕方ないと思う。
やはり二周目にリタイアする走者が続出したというのだから。
それを見て合格出来るかどうかの判断を自ら下したのだろう。
懸命な判断だ。
そういう意味で言うと第一走の走者はハズレクジだった。
吐いたり倒れたり潰れたり……。
一周なら合格になった奴もいたのだが、現実は厳しい。
合格者は十人を割った。
……だいぶ少ないな。
二次試験の前と後とで、心配事が真逆になってしまう事態だ。
…………最終的に一人しか受からないとかないよね?
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