第35話
お先真っ暗だね。
この先に待ち受ける未来の話――――かどうかは置いといて。
現状の感想です。
回転扉を
直ぐそこにいたテッドとぶつかるぐらいなのだから、それほど奥まっては無さそうである。
……なんでここまで暗くしているのか。
鶏小屋も暗くはあったが、あくまで薄暗いの範疇で全く光が差さないということはなかった。
恐らくだが本来あった隙間に粘土や藁を詰めて光を通さないようにしているのだろう。
その厳重さに、この場所の特別性が分かる。
……なんでそういう所に入るんだよ、こいつらは……。
前文に似たような感想を持っていたのか、暗闇の中からテッドの声が響く。
「相変わらず暗いよな、ここ」
「ちょっと待ってろって……あ、レン。あんまり先に行き過ぎるなよ? 危ないからな」
それは早く言うべきだな。
「大丈夫だ! 俺がガードしてたからな!」
……ああ、それでぶつかったのか?
「あったあった。……ほら、どうだ?」
自慢気なチャノスの声と共に明かりが灯る。
光源の中心にはランプを手にしたチャノスが立っていた。
…………それ『光』の魔晶石じゃないの? え? いいの? っていうか絶対無許可だよね?
本来なら油が燃えているであろう箇所に入れられた粉が自ら光を放っているランプ。
言わずもがな
「見える見える。俺が先頭でいいよな? 貸してくれ!」
「ああ。気をつけろよ?」
頭ごしに交わされる会話をヒントに、未だ続きがあることが読み取れた。
チャノスからテッドに渡されたランプの存在が、どうやら暗闇を進む必要があるのだと予想させた。
「よし、こっちだレン。足元、気をつけろよ?」
お前らに気をつけるべきだったよ。
「あんまり離れるなよ、レン。光が届かないからな」
こんなに近いのに俺の想いが届いてない。
後ろから来るチャノスに背中を押されるようにしてテッドの後を行く。
……どうしようもない悪ガキ共だわ、こいつら。
分かってたつもりだったんだが……つもりだったというだけのようだ。
数歩も行かないうちに、テッドの体が下がった。
たぶん小屋の壁に沿って歩いていた筈なので、ちょうどテッドの体が下がった辺りが終……うわぁ。
チャノスが言っていた危ないの理由が分かった。
光源に照らされたテッドの体は、下がったのではなく――――降りたのだ。
地面に空けられた穴を。
整形されていないデコボコな感じが生々しい。
隠し通路…………しかも地下通路?
パッと思い浮かんだ言葉の重さに俺が沈みそう。
なんなの、お前ら?
「大丈夫だレン。ちゃんと
そうじゃねぇよ。
立ち止まった俺を安心させるように促すチャノスに腹が立つ。
ここ、たぶん凄い重要な施設っぽくない? いいのか? 子供が知ってて……。
「あ、あのさ…………ここって、他には誰が知ってるの……かな?」
「ほか? あー……アンとエノクとマッシは知ってるな。この前盗み聞きするのに使ったから。……それだけかな?」
そんなにだよ?!
「あとテトラも知ってるぞ! 俺が教えたからな!」
余計なことすんなし?!
そういえば……この前の大人会議の時に、どうやって託児所を抜け出してきたのかなって疑問だったんだけど……可愛いから別にいいかって流してたんだけど……もしかしてここから?
あ、危ねえ?! どんな冒険して来てんだよ、ご近所で?!
下から声を飛ばしてきたテッドに、思わず地面を蹴って砂を掛けた。
「わっぷ?! おいレン! 砂落ちてきたぞ?!」
「ああ、ごめん。怖くなっちゃって」
お前らがな。
「焦んなよ、レン。ゆっくり降りればいいからさ」
既に手遅れだよ。
どうやってここの利用を封じようか考えながら梯子を降りる。
穴にそこまでの深さは無く、直ぐに底へと辿り着いた。
良い考えは思い浮かばなかった。
……短いんだよ!
ランプを手にしたテッドが穴の底を照らしている。
どうやらまだ続きがあるらしく、照らしきれぬ先に横穴のようなものが空いていた。
穴の底から繋がる通路は、地面を横に掘り進んだだけのもので、木枠や石畳で舗装されているということは無かった。
大人一人がギリギリ通れる横幅と高さだ。
……もしかして非常用の脱出口? いや抜け穴か? ……あ、ああそうか。そういうことね。
暗闇の中を進んでいるうちに、この通路を作った目的に思い当たった。
隠された通路なんて物の相場は大体決まっている。
話の前後や方角的に繋がっている場所にも見当が付く。
そもそも鶏小屋の管理をしているのが何処かということを知っていれば自ずと答えは出る。
……そういえば、いざという時は避難所になると聞いたことがあったなぁ。
だとしたら……。
思わず振り返った先には将来の家主がいた。
「どうしたレン? ……トイレか?」
「ううん……」
お前がいいんならいいんだけどさ……。
たぶん面倒なことになるぞー。
いや、お前らかな?
チャノスが村長とチャノスの親父しか知らないって言ってたしな。
本来なら村長と家長ぐらいしか知り得なかった秘密なのだろう。
どうやって探り当てたのかは知らないが、こういうことは他人にバラすべきじゃないと学習してくれればいいと思う。
埋め直して新しく作るのか口止めするのかは、将来のテッドとチャノスが負うべき苦労だな。
幼馴染達の将来被るであろう負担を余所に、ここからどう盗み聞きをするのだろうと他人事のように考えながら、テッドを追い掛けて足を進めた。
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