第23話


 前言撤回だ。


 不満がある。


 具体的には罰の大きさについて。


 その大小があるのは仕方がないことだと思う。


 主犯と従犯なんて言葉があるぐらいだし? 責任の所在をハッキリとさせて、その罪の重さにあった罰を課すのが妥当。


 そうは思わないか?


 子供が受けた罰を参照しておかしな点を洗い出してみようじゃないか。


 エノクとマッシ。


 この二人には半年間の狩り禁止が言い渡された。


 しかも村の厳戒態勢が終わってからなので、どうにもヤキモキとする毎日が続くことだろう。


 この態勢が続いている限り、自分達の罰は伸び続けるというのだから。


 あの年頃の半年間というのは、後のにも繋がる。


 狩りの腕が自慢の二人なだけに、他の奴との差が広がるのを指を咥えて待つというのは良い罰になると思う。


 この二人はいい、予想の範疇。


 ターニャちゃん。


 特にお咎め無し。


 これも文句無い。


 ターニャの行動が四人を救ったことに違いはないのだから、俺が文句を言う筋合いは無い。


 ターニャの両親が無罪放免だと言うのならそうなのだ。


 おない年のバカ野郎から説教紛いの詰められ方もしたもんね、ほんとにその節はすいませんでした。


 ただ監視というか付き添いというか……。


 出掛ける時は誰かと一緒であること、できれば大人が見ているとこで遊ぶこと、と言い渡されているんだとか。


 迎えに来るのはともかく、送ってあげているところを見るに、心配は尽きないみたいだ。


 ウルトラにマイペースなターニャさんとして、やや不満そうである。


 これも分かりやすいだと思う。


 そして俺。


 十日間の外出禁止。


 ご褒美かな?


 そう思ったことが私にもありました……。


 ただし母と一緒の畑仕事は良くて、午後からも親の監視の中でなら外に出ても良しという……聞けば聞く程に俺に都合が良い罰……というかご褒美。


 きっと幼馴染達に日々振り回されている俺を気遣ってくれた神様がご褒美をくれたんだよ――――なんて…………愚かな。


 まずは夜。


 父と母が俺に抱き着いて眠るようになった。


 ぎゃああああああああああ?!


 酷い、なんて酷い人達なんだ! 人の心は無いのか?! 何が悲しゅうてこの歳で肉親に抱き締められて寝なあかんねん! ああ五歳だっけそうでした! せめて服を着るぐらいの配慮があってもいいでしょう?! ひぃえええええええ?! やめてやめて押し付けないで具体的には父この野郎?!


 スキンシップが過剰になった父と母に……この罰が十日程度では終わらないことを確信。


 早いとこ一人部屋が欲しいと思う毎日だ。


 しかし表側の罰はご褒美である――――なんて思ったか?


 昼までの流れは一緒。


 昼からは外出禁止という名の自由を満喫できる、そう考えていたのは子供心が無い子供。


「あら? いらっしゃい」


「お邪魔します! もうほんと、テッドもレンもバカなんだから!」


「おじままっす!」


「……します」


 幼馴染達が遊びに来るようになった。


 ……それじゃいつもと変わらなくないかい?


 しかも。


「おーい、レン! 遊びに来たぞ!」


「れ!」


「お邪魔します」


 何故か脱走の主犯格共も来る。


 お前ら、罰はどうした?


 不安というか不満に思った俺が訊いたところ、悪ガキ共は痛ましい表情で答えてくれた。


「ああ……さすがの俺たちでも堪えたぜ。一ヶ月だぜ? やってらんねぇよ……」


「全くだ。結果的に誰にも何もなかったっていうのにな……ちっ」


 ふむ? 確かに罰を受けているのは間違いないようだ。


 その苦々しげな表情と口調に嘘は無かった。


 しかも一ヶ月。


 俺より長い。


 納得できる。


 しかしここに居る時点で外出禁止じゃないのは明らかで……。


 お前ら、何が一ヶ月なの?


「それが聞いてくれよレン! 一ヶ月! 一ヶ月だぜ? 一ヶ月間――――オヤツ禁止だって言うんだ! ひどくね?!」


「バカ。テッドなんてまだいいさ……俺なんて小遣いも無しなんだぜ? 一月も……」


「そんなの俺だって減らされてるよ!」


「減らされるのはまだいいだろ? 俺は完全に無しなんだぞ?!」


 ほう?


 二人の言い分を聞くに、その罰は一ヶ月間のオヤツ禁止と小遣いの減額または没収らしい。


 なるほどなぁ。


 ターナー、角材。


 そもそもの間違いなのだが、この重い罰というのに関わるのは『食事』なのだそうだ。


 成長云々とか本人にとっての罰とかじゃなく。


 単純に食べる量が少なくなること。


 それがこの村の『重い罰』。


 狩りが禁止になれば食卓に上がるおかずは一品少なくなり、お小遣いが減れば買い食いができなくなる……そんな理由なんだと。


 そのうえオヤツまで禁止にされたら、どうやって飢えを凌げばいいのかと憤懣やるかたない様子の両人。


 うんうん、それは痛いねぇハハハ割に合わねえ。


 子供か?! お前ら!


 実年齢とかこの際どうでもいいわ! 脱走なんて危ないことやらかした罰がオヤツ抜きってなんだよ?!


 そもそも買い食いしてたことすら初耳だわ!


 お前らの罰がそれで俺の罰がこれ?!


 狂ってる! 世の中狂ってるよ絶対! ああファンタジーな世界だったなちくしょおおおおおお?!


 せめて尻叩きぐらいされて、幼少期の黒歴史を刻んでいて欲しい――――そう願わずにはいられない、今日この頃です。


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