第12話
もはや俺を揺らす遊びへと移行していた幼馴染達が、チャノスの言葉に静かになった。
てめぇ人見知りコラ黙ってろ。
見ろ、アンがビクつき過ぎて気を失って……こいつ寝てね?
信じられないよ。
俺の幼馴染共が個性的過ぎてついていけない件。
……どうするか……指足しする?
「み、見に行くって……お、大人の話を……盗み聞き、するのか……?」
おっと、テッド君はあまり気乗りしてないみたいだね。
そうね、君はそう。
チャノスも親友が乗り気じゃないとなれば……。
「ビビってんのか?」
煽るのかよ。
なんかチャノスがいつもと違ってややぶっきらぼうというか反骨心があるというか……なんでだ?
なんかあった?
そういえば今日はあんまり喋ってないね?
てっきり人見知り全開してるのかと思ってたよ。
「ビビってない!」
ムッとしたのか、反射的に返すテッド。
「ならいいだろ? 別に……ちょっと話を聞くだけさ。悪いことするわけじゃない」
いや聞かせないように配慮されてるじゃん、なんだその何故理屈、子供か。
「……俺も聞いてみたいな」
大人の会議に潜入する方法で盛り上がり始めた悪馴染共を、どうやって丸め込もうかと頭を悩ませていると、向かいのベッドに座った少年が声を掛けてきた。
ちょっと黙っとけ?
こいつらは最悪、話し合いだけで盛り上がって終わるパターンだったのに……。
それじゃ行かざるを得なくなっちゃうじゃん。
「じゃあ一緒に行くか?」
その一言は余計が過ぎるぞチャノス。
様子見していたことが仇となった。
なんか盗み聞きする流れになっている。
チャノスの言い方も少年への反抗心を煽ったのか、なんとなく話に入ってきたという感じから、行ってやろうじゃねえか! と前のめりになってるし。
年下にナメられまいとする心理も働いているのかもしれない。
いやいやいやいやバカバカバカバカ。
大人しくしてろって、マジで。
どうしよう。
こいつら俺の話とか聞かないからなぁ。
しかも今日のチャノスは反抗的だ。
なんか軽く
やってくれるかターナー?
「指足し……」
お前欲望に正直過ぎん?
「ちょっと! 何言ってるのよ! ここで待ってるように言われたでしょ? ちゃんと言うこと聞きなさいよ!」
信じてたよ委員長。
腰に手を当てて立ち上がったケニアが、おさげを払って男子を一睨み。
なんで俺を含むん?
「ハッ。なんで大人の言うこと聞かなきゃいけないんだよ? 大人だからって指図される言われはないね」
いやあるよ。
「来ちゃダメだって言われてるんだから行っちゃダメに決まってるでしょ?!」
二の二の四ね。
「来ちゃダメとは言われてない」
屁理屈か。
「待ってなさいって言われたじゃない!」
それ六だから死亡ね、ズルすんなターナー。
「そうさ? だからもう待っただろ? 待って、その後で行くんだ。言われた通りだろ?」
足の指は……って曲げれんのかよ?! 器用だな。
「あのね! 待ったからって! ……うん? えーと……よく……ない?」
あ、いかん、そこで詰まっちゃダメだケニア。
別に論破したわけでもなんでもないのに勝ち誇った表情のチャノス。
いやあれただの屁理屈だからターナー手を蹴り上げるのはやめて。
踏み潰せばいいってわけでもないから痛いから。
「ご飯?! …………ご飯?」
アンは寝てて。
「……」
テッドは喋れ。
「分かったら邪魔するなよ? 大人に言うのも無しだからな」
チャノスが話は終わりだとばかりにケニアを無視して盗み聞きの内容を詰めるために反対側のベッドに移る。
ケニアがそれを「ぐぐぐっ」と唸りながら見つめる。
いや言い負けてないからな?
言いつけろ言いつけろ。
バレたらマズいって分かってるから隠そうとすんだよ、悪いことだって分かってんだよ、あれは。
見つかって叱られてしまえばいいよ。
ターナーさん? 足で手をグリグリするのはやめてくれません? そんなことしても勝敗は覆らないので。
チャノスの話に賛成しているのはベッドにいた二人だけのようだが、しかし他の子供が邪魔しないところを見ると年上グループの中心人物なのだろう。
テッドとチャノスが行ったからとアンも付いていき、しばらくの話し合いの後、粗方作戦が決まり腰を上げる悪ガキ共。
『見つからないようにする』の何が作戦なのかは知らないが。
いざ行かん! となった時に小屋の扉が開いた。
ビクついたのが立ち上がっていた悪ガキ五人。
アン……ダメだって分かってんならやめりゃいいのに。
流されてタバコ吸っちゃうタイプだな。
怒られろ怒られろ、そして学習するといい。
しかし期待とは裏腹に、扉から顔を覗かせたのは大人ではなく――――ストロベリーブロンド。
「れー」
可愛いだった。
あーでも今じゃないんだよ……ほら? 悪ガキ共がホッとしてるじゃん。
あーあ。
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