第11話


 緊急事態発生。


 いつもの小屋だ。


 しかし人口密度が高い。


 何故か?


 この村の未来を担う若者が集合しているからだ。


 幼馴染の六人は勿論だが、この村には他にも子供がいる。


 顔を見ることがないのは年齢差のためだろう。


 家の手伝いを始めた頃から、この小屋というか子供の遊びを卒業し始める村の子供達。


 例外あり。


 まあ、一部の例外を除くと、歳の近い者同士が幼馴染グループとして出来上がる村事情。


 学年差というか小・中・高みたいな差が存在する。


 ただし先輩云々などはない。


 別に悪い意味じゃなく、ノータッチな関係というか、全員がフラットというか、そんな感じ。


 唯一例外があるとしたら悪ガキ筆頭のテッドとチャノスだろう。


 次期村長候補と商家の若旦那だからね。


 少し甘やかされているところがある。


 良くないね、ああ良くない。


 そんな二人をシメちまおうと考えた別の幼馴染グループが溜まり場にやってきた――――とかではない。


 残念ながら。


 この村の気性なのか、生意気だからシメちゃおうという考え方は無いようだ。


 ……ちぇ。


 では何故、他の幼馴染グループが小屋にいるのか?


 それは親に言われたからだ。


 ここで待っているように、と。


 俺も言われた。


 おかげさまで小さな小屋の中は子供でギチギチです。


 大体二十人弱といったところか……。


 この村の子供グループは、大きく分けて四つ存在する。


 一つは赤ちゃん世代。


 実はテトラもここに入るであろう世代で、小屋に来るというか基本的にまだ一人歩きが難しい赤ん坊達のことだ。


 どっかのイタズラ坊主が世話を投げなければテトラもここに所属していたと思う。


 まあ、テトラも大きくなったらテッドみたいに一つ下の世代の主みたいに……なって欲しくないなぁ。


 二つ目は、個性派世代。


 現役の小屋世代で説明は不要だろう。


 神父のおじさんに怒られるのが一番多い世代だ。


 なんでだろうね? 不思議。


 そして三つ目が、大人準備世代だ。


 歳の頃は中学生ぐらいの子が多いんだけど、成人の年齢を考えると大人の一歩手前と呼んでも差し支えのない世代で、親の手伝いという仕事もこなしている。


 それ相応のプライドも醸造されているからか、自身では既に大人と変わりないとか思っていそう。


 子供と一緒の小屋に入れられるという子供扱いが不満そうなので直ぐに分かった。


 でもここで騒ぐのも子供っぽいからと大人しい。


 十把一絡げな世代。


 俺もこの世代に生まれたかったよ……。


 そして最後に、既に大人と目されている成人世代。


 成人一年生ぐらいの年齢で、半人前扱いされることも多い、世話役の娘の世代。


 半分子供みたいな年代。


 でも大人なんだよね。


 世話役だったお姉さん以外はよく知らないけど。


 そのお姉さんだって村ですれ違ったら少し話をするぐらい。


 主に話すのは仕事の愚痴という……世界が変わっても変わらないこともあるんだな、といった内容。


 この村の年齢が浅いのか深いのかは聞いたことないので分からないけど、たぶん父母の年齢からして上の世代は村生まれじゃないっぽい。


 それが温度差となっている今現在。


 ワイワイと賑やかなのは一つのベッドを占拠している第二世代。


 狭ぇよ。


 ちなみに六人だ。


 今日はテトラ抜きである。


 赤ん坊世代は赤ん坊世代で纏めて世話をしているらしく、テトラはそちらに放り込まれた模様。


 向かいのベッドには見掛けたことはあるけど親しくはない少年二人が腰掛け、他の子供は床に座っている。


 テーブルの上だけが唯一の空白地帯だ。


 幼馴染共と違って、他の子供達は静かだ。


 というか心配そうな表情であったり、不安そうな表情であったりと、いい顔をしていない。


 原因は大人が開いている会議……だと思う。


 『こいつら、うるせえな?』的なことじゃないよね?


 だとしても『こいつら』に俺を含めないで。


 俺、喋ってないんだし……。


 大人しい俺の肩を子供らしい幼馴染共が揺さぶる。


「……指足し」


 しないから。


「あたし気付いたんだけど薬指から指を上げると小指も一緒に上がるのよね。これってあれよね? け、け、けっこん? けっこんだわ! ちめーてきけっこん! どうしたらいいと思う?」


 薬指やめればいいと思うよ欠陥娘。


「大集合だぜレン! ワクワクするな? 親父達、なに話してんだろな?」


 ドキドキすることだと思うぞ?


 人見知りを発揮させたチャノスとアンは言葉少なだ。


 座る場所も他の子供に接さない位置をキープ。


 しかもチャノスは普段接さない子供が多いからか、クールキャラアピールで物憂げ。


 女子ウケを狙っていると思われる。


 そんなことしなくとも君、商家の若旦那だから。


 将来モテる確定だから。


 他の幼馴染グループを加えた小屋の中の男女比は半々といったところ。


 俺達の年代は男に偏っているが、上はそうでもないらしい。


 でもベッドを占領しているのは男。


 まあ、子供だから。


 もしくはレディファースト的な概念が無いだけなのかもしれないけど。


 肩をガクガクと揺すられながらそんなことを思う。


「……指足し。指足し指足し指足し」


「親指で押さえたら大丈夫だわ! あたし、見つけたわ! でも不思議ね? なんで薬指だけ上げると小指も付いていくのかしら? ……ねえ、聞いてる? ねえレン、ねえってば!」


「大人だけ集まるとか初めてだよな? なんだろな? 気になるよな!」


 えーい、やめろやめろやめろ。



「――――だったら、見に行ってみないか?」



 余計なことを言うのはやめろ!


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