第10話 形勢逆転、強敵の気配
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視界を埋め尽くす程のモンスターの群れと対峙し、心臓の鼓動が爆発寸前だ。
どう考えても、初めてのダンジョン攻略で相手取る敵の数ではないだろう。
「ついこの間まで裏山で
心臓の鼓動は勢いを増していく。
この心の高鳴りは恐怖じゃない、かつてないほどの高揚感だ。
「ここで一気に叩く! 形勢逆転といこうじゃないか!」
ここまで一直線に逃げてきたおかげで、コボルトの集団は後方の一方向に集中している。これなら好都合。
集中力を高め、タイミングを見計らう。そしてーー
「くらえ……
巨大な魔法陣がモンスターを包み込む。
攻勢に転じていたコボルト達は意表をつかれたように次々とその効果範囲へ飛び込んで来た。
ーーそこへ
本当に何度見ても凄い威力だ。
その
金属のように硬い針の樹木を簡単に燃焼してしまうほどの威力、改めて圧巻の一言に尽きる。
それが初級魔法の魔力消費で扱えるのだから我ながら本当に末恐ろしい。
ーー魔力は充分、距離も充分。
今の一発だけで、少なく見積もってもニ十体ほど倒せただろうか。
ーーただ一つ、そんな雷撃にも欠点はある。
それは雷撃が“定点魔法”であるという点だ。
詠唱や魔法陣などの予兆を感じ取られてしまえば避けることも出来てしまう。
特に相手が素早い動きをするモンスターであればあるほど、倒すのは難しくなるだろう。
ーー冒険はいつだって最悪の想定をしておかないと。
幸か不幸か、嫌な予感は的中するもの。
それを裏付けるように一匹のコボルトが雷撃の余波をくぐり抜けてこちらへ向かって来た。
「速い!」
それでいて体格も他のコボルトより一回り大きい。
ーーあ……あれはきっと“ハイコボルト”だ。
弱肉強食の世界で長く生き残ったコボルトがより強く進化した上位個体。
低級モンスターのコボルトと
火照った身体に激しい
強敵の気配に本能が危険を訴えかけているようだ。
「大丈夫……恐れるな。僕だって強くなったんだ!」
先頭のコボルト、もといハイコボルトの勢いは止まらない。
背後に大勢のコボルトを引き連れて、こちらへ向かってくる。
そこへすかさずーー
「もう一発……雷撃!」
その赤黒き
ーーが、肝心のハイコボルトは健在。
いよいよヤツは他のコボルトを置き去りにするように突出した速さで突き進んで来る。
そして息をつく間も無く、僕とヤツとの距離は既に雷撃の効果範囲の直径より近くなった。
この距離で雷撃を放てば自分自身も巻き込んでしまいそうだ。
ほんの一瞬、後ろを向きかけた体に
ーー殺さなければ殺される。
心臓がバクバクと音を立てて僕の焦りを誘うのだった。
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