第7話 コボルトの群れ
==
人狼型のモンスター、コボルトが群れを成して歩いているのが見えた。
ざっと数えても二十匹以上は居る。
まだ気付かれてはいないはずだ。
“あの魔法”を試すには絶好のチャンス。
大きな期待と少しの不安から手に汗を握る。
「きっと大丈夫……少なくともここなら誰かに見られることはない」
僕は魔導書を開き、意識をコボルト達の居る地面へ向けた。
汗が滴り落ちる。指の震えが止まらないのは武者震いというやつだ。そうに違いない。
そうこう思案している内に大地が震え出す。
やがてコボルトの群れを包むように赤い魔法陣が浮かび上がり、そしてーー
「
掛け声とともに大地の魔法陣から“赤黒い雷の柱”が顕現する。
二十匹以上のコボルトを優に覆い尽くすほどの規模で、数秒かけて天に翔け上がっていったそれはやはり明らかに“普通の雷撃”ではなかった。
「よし……成功だ!」
コボルト達は硬い爪や牙だけ残して消え去り、その
ーーその
そして、モンスターを倒して得られる魔力は使用した魔力保有量を回復するとともに、その限界値を上げる経験値ともなる。
「さすがダンジョン……野良のスライムを倒した時とは比べ物にならないな。群れを一気に倒していけば、まだまだ撃てそうだ!」
僕の魔力保有量は決して多くない。
炎撃なら一日に二十発程度が限界だった。
ーーただ“緋色の雷撃”は、その派手な見た目とは裏腹に驚くほど低燃費だ。
魔力を消費した実感よりも、モンスターの魔力を回収した感触の方がむしろ強い。
「雷撃一発分だもんなぁ……」
ーーコボルトだと一匹ずつ相手取れば流石にジリ貧か?
二匹で恐らくプラスマイナスゼロ、それ以上ならお釣りが来そうだ。
つまり、常に三匹以上引きつけて同時に倒し続ければ永久機関的にダンジョンを攻略していけるだろう。
ーーそれが分かるとどうしても欲が出る。
「とりあえずあともう一回……もう一回だけ」
僕は近くの岩に登り、次なるターゲットを探す。
ーーが、針林ダンジョンは絶望的に視界が悪い。
道が整備されているわけでもなし、先の冒険者達が切り
それでも
「まぁ視界が悪いのは好都合だ、他の冒険者からも見つかりにくいもんな」
かといって調子に乗って歩き回れば敵と目の前で
この針林ダンジョンは奥に行けば奥に行くほど“木々の密度が高くなっていく”という性質もある。
「今はこの辺りでジッと待つしかないか……」
幸い、他の冒険者の姿も見えない。
しばらくは入り口付近で雑魚狩りに専念しよう。
「それに……何かあればすぐにダンジョンを出られるようにしておかないとな」
そんな危機感を、まだこの時の僕は持っていたのだ。
ーーそう……この時はまだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます