第137話 劉備入蜀 Ⅱ

 劉璋は成都にあって五斗米道が壊滅したことを喜び宴会を催した。

その宴には劉備も招かれ、酒は並び美女は舞ってそれは楽しいものである。


 ただ、劉備一行は宴を楽しみつつ通りすがりに成都の城郭を見て回り、その構造を把握していった。


 そして、劉備らは酒もほどほどに退出することになったが、張飛が酒の飲み過ぎで酔って寝てしまい、張飛は後で起きたら劉備の陣に帰るということで、劉備らは先に帰陣した。


 しかし、張飛は酔いつぶれて寝ながら何やら寝言を言っているので、劉璋配下の厳顔が近づいて聞いてみると・・・


 「俺らは劉璋を討つ~・・・俺らは奴を討って巴蜀を手に入れるんだぁ~・・・」


 と喋っているので厳顔は慌てて劉璋に報告した。

だが劉璋は、


 「ただそういう夢を見ているだけなのだろう」


 と言って疑わず、その後目覚めた張飛を劉備の陣営に送り届けた。


 「これは極めて疑わしい」


 一方で主君の判断に納得がいかない厳顔や王累などは偵察を飛ばした。

すると・・・


 「やはり思った通りであった。劉備は我が主君を討とうとしていたのだ!」


 劉備軍が劉備率いる本隊と龐統率いる別働隊に分かれて成都に迫っていたのだ。


 その事実を厳顔から聞いた劉璋配下の張任は劉備を益州に入れる提言をしたことを後悔し、


 「急ぎ劉璋様に知らせてくる」


 と主君にその事実を伝え、自ら龐統率いる別働隊を急襲したいと申し出た。


 (劉備を入れてしまったのは私の責任である。ここは主君を守らなければ・・・!)


 張任はその責任を背負って出撃し落鳳坡らくほうはの崖地にて龐統隊を襲撃。


 「な・・・!見破られたか、ここは撤収だ!」


 龐統は撤退を指示したが、狭隘な地で反転も上手くいかず、追い込まれた鳳雛は崖から転落し、若くしてこの世を去ることになった。


 落鳳坡にて鳳雛、落ちる。


 劉備は這う這うの体で逃げて帰ってきた兵士から龐統の最期を聞いて落涙したが、

悲しんでいる暇もなく・・・


 「国を盗ろうとする盗人め!この厳顔が退治してやる!!」


 「この王累、劉備の首を掲げてやるから待っていやがれっ」


 劉備軍の本隊にも劉璋軍が押し寄せる。

劉備軍も応戦し黄忠が自慢の弓矢で王累を討ち取り一時優勢になったが、張任が落鳳坡から移動して参戦してくると戦況は一変。


 劉備軍は地勢を利用した張任の攻撃に苦戦した。

劉備は神出鬼没な張任の軍勢に対抗するためには地勢の把握が欠かせないとし、


 「地図だ、誰か巴蜀の地図を持っていないか!?」


 配下たちに尋ねたが地勢まで載った細かい地図は見つからない。

そんなところへ、風魯があたふたしながら戦場から戻ってきた。


 「はぁ、戦闘に巻き込まれちゃって・・・」


 と呟く風魯に劉備はダメ元で聞いてみる。


 「巴蜀の・・・地形が細かく載った地図は持ってないか・・・!?」


 すると、風魯は片手に持っていた巻物を開いて、


 「この山とか通れる平地とか詳しく載った地図ならあるよ・・・?」


 と答える。


 劉備はこれに驚いて地図を貸してほしいと言ってきたので、風魯も快く渡す。

その地図は開くととても大きく、細かい地図でおおよその地形が載っていたので、


 「これだ!これを見れば張任がどう動いているのか分かるぞ!」


 と劉備は大喜び。


 この地図をもとに劉備軍は張任軍が現れそうな位置に待ち伏せし現れたところを襲撃。

 見事、張任を生け捕りにし、そのままの勢いで厳顔なども撃退できたのである。


 劉備は張任に仕官することを求めたが張任は頑なに断って処刑され、また厳顔は劉備に臣従。

 風魯の持っていた地図は劉備の入蜀を大いに助けることになったのだった―

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