第131話 風魯、旅に出る Ⅱ
「え、あの風魯大将軍が門前に来ている?それはまことか!?」
部下の報告に顔を明るくしたのは劉璋配下として荊益境の関所を守る許靖だ。
彼の一族には
すでに亡き許劭とは生前仲が悪く、意見が食い違うことも多々あったが、
「一度、風魯という男だけは鑑定してみたい」
という願望に近い思いは一致していた。
許劭はそれが叶うことなく旅立ち、許靖は人物鑑定会である月旦評を既に閉じていたが、風魯の来訪を聞いて好機だ、と胸を躍らせたものである。
彼は関所の門前まで迎えると、風魯に人物鑑定に付き合ってもらえないか頼み込んだ。
(えぇ、早く益州を巡りたいのに、面倒くさいなぁ)
風魯は断る素振りを見せたが、引き下がるつもりのない許靖は、
「これに付き合ってくれたら益州一帯が描かれた地図をあげよう。旅には役立つはずだが、どうでしょう?」
と風魯が今一番欲しいもので釣ったため、風魯も地図がもらえるならと応じた。
「ふむふむ・・・」
許靖は人相、手相をじっくりと見つめると、さらにこのような質問をする。
「風魯大将軍はこれまでの人生においてどの場面が一番印象に残ってますか?」
「そして、近ごろ見た夢で印象に残っているものはなんですか?」
「この二つの質問に答えてほしい」
これらの質問に風魯は少し悩みながらも、、
「場面、かはわからないけど私には様々な武将が寄ってきてたから、沢山の武将に会えたのが良かったと思うなぁ」
「あと、夢だと、最近同じ風景が良く出てきてて、広くてなだらかな草原に牛がいる夢かな」
と質問に答えた。
すると、許靖は風魯の話した内容や人相などから答えを導き出して・・・
「わかった。わかったぞ!決まった地形にその動物。そしてあなたは分断の世にあって命が人を集める。つまり、あなたを表す言葉は・・・」
「地勢の牛、乱世の勧誘!!」
許靖の言葉に風魯はどことなく聞き覚えがある気がしたが、深く考えるような男ではない。
「ふぅん、済んだなら地図を渡してよ」
「あ、そうでしたね、少々お待ちを」
許靖は奥に入っていくと巻物を一つ持ってきた。
「これが巴蜀から北は漢中にかけて描かれた地図です。ぜひご活用ください」
風魯は試しに巻物を広げてみると、確かに益州一帯が詳しく載っていた。
「ありがとうね、活用させていただくよ」
「いえいえ、鑑定に付き合ってもらったからそのお礼です」
「じゃ、またね」
風魯は許靖に別れを告げると、地図を見ながら益州を成都方面へと進んでいった。
それを見送った許靖は満面の笑みで叫ぶ。
「よっしゃぁ!ついに私も許劭の奴に追いついたぞ!一度は言ってみたかった、”治世の能臣、乱世の奸雄”!!」
「ま、なんとなく違うけど。えへっ」
そう、これは許劭が若き日の曹操を評した言葉。
年下の許靖は許劭と仲違いしながらも、鑑定の先輩を追いかけていたのだ。
意味が酷いのは、気にしない気にしない―
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