第27話 俺の外交術 Ⅱ

 「何っ、兗州えんしゅうを呂布に奪われた!?」


 配下の知らせに曹操は驚く。


 呂布は董卓を成敗した後、董卓旧臣の李傕と郭汜に長安を奪われて

諸州を転々としていたが、一昨日の夜になって兗州の留守をしていた

曹操配下の陳宮ちんきゅうという男が呂布を入城させて裏切ったのだという。


 「おのれ陳宮、許さぬ!」


 徐州に出陣していた曹操はいきり立ち、今すぐにでも奪還しに

兗州へと引き返そうとしたが、それを曹操配下の夏侯惇かこうじゅんが諫める。


 「お待ちください、呂布は今恐らく戦意高く我らを打ち破りに

城から出てくるでしょう。その場合相手は攻撃力が高いですから、

むやみにぶつかったら敗北も否めません」


 「では、どうすればいいのだ?」


 夏侯惇の進言に曹操は困惑の表情を見せたが、

夏侯惇という男は諫めて終わりという武将ではない。


 「しからば、私が先に防衛陣形を布いて呂布を待ち構え、

呂布の出鼻を挫いて見せますから呂布の勢いが削がれたところで

一気に総攻撃の合図を出していただきたい」


 彼は呂布と正攻法でぶつかることの非を唱えた上で

まずは守備を固めて出鼻を挫くべしと提案したのだ。


 「確かにそなたの言う通りだ。では、夏侯惇。そなたは先に兗州へと向かい

柵や空堀を構えて敵を待ち受けるのだ」

 「呂布の勢いをそぐ、そんな活躍を期待する!」


 曹操はその進言をすべて受け入れて、防衛の大役を彼に一任した。


 そして、夏侯惇はその期待に応えるように陣地を張り、

押し寄せる呂布軍に対して一歩も引かず、さらには赤兎馬に跨る呂布に

弓矢で傷を与えることに成功。

 完全に呂布軍は当初の勢いを失った。


 「時は来たぞ!全軍突撃っ!!」


 呂布軍が夏侯惇の陣営を攻めあぐねていたところへ曹操の本隊が押し掛ける。

これにはさすがの呂布も支えきれずに敗走したのである。


 その後、呂布はせっかく奪った兗州の地を失って徐州へと逃亡する。

そして、この徐州はあの男・・・劉備玄徳が治めている地だ。



 劉備らはしばらく公孫瓚のもとに身を寄せていたが、

徐州の太守、陶謙が劉備のことを大変気に入り劉備は徐州に身を寄せる。

 だが、その陶謙も病気になり、ろくな後継者がいない中で劉備に徐州を託して

この世を去ったのである。


 初めは劉備も太守就任を辞退していたが、


 「この徐州を任せられるのは劉備殿をおいてほかにいない!」


 と陶謙の重臣らに強く懇願され、遂に彼も受け入れたという次第だった。


 そういう彼だから、呂布が訪れると厚くもてなして徐州に受け入れたのだ。

まぁ、その義兄弟である張飛などは反対したようだが・・・


 「なに、劉備が呂布を受け入れただと!?許さぬ、劉備共々成敗したる!」


 曹操は劉備に敵意を抱き、大軍を率いて徐州に侵攻した。

昨年に父親を陶謙配下の武将に討たれた経験のある曹操は何かと徐州に恨みがある。


 そして、俺もその陣に参戦し曹操の配下として戦ったが、

どうも劉備と戦うのは乗り気ではない。


 そんな中、俺が率いる風魯隊が重囲に陥った劉備を捕まえてしまうのであった。



 ※人物紹介


 ・陳宮:曹操配下のち呂布の軍師、曹操とは旧知の仲。

 ・夏侯惇:曹操配下、武勇に秀でる。

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