第26話 俺の外交術 Ⅰ
俺の願いは遂に叶った。
あの娘・・・于禁の妹を輿入れさせることに成功したのである。
「全霊をかけてあなた様をお支えする覚悟です」
「ああ、よろしく頼む」
そして、聞けば彼女の兄、于禁も曹操に取り立てられたという。
その陰にはこの婚姻があったとか、なかったとか。
「風魯将軍、私の妹をよろしくお願い申し上げます」
その于禁も宴会の席に現れて祝賀を述べた。
さて、曹操のもとに仕える俺だが、戦場ではないところで
活躍している。
まず、主君、曹操に正式な兗州の太守というお墨付きを得させたことだ。
今、都長安の一帯は李傕と郭汜の二人が共同で献帝を抑えて
制しているが、その二人と董卓時代に交流があった俺は長安に行って
彼らに頭を下げ、漢王朝公認の太守として曹操を認めさせた。
さらに、これは直前のことだがもう一つ貢献をしたのだ。
そのきっかけは北方からの報せ。
「申し上げます、幽州の公孫瓚が同州に勢力を張る劉虞を討伐した模様」
「これにより公孫瓚の勢力は幽州で敵なしとなったようです」
これに俺は黄巾の乱時に俺の陣中での両者の関係を思い出しながら、
曹操に献策する。
「曹操様、ここは公孫瓚と良好な関係を築くべきです!」
俺の意見に曹操は少し黙っていたが、ようやく俺の意図を理解したようで、
「しかし、袁紹という小心者をそこまでして警戒する必要があろうか?」
と返してきた。
袁紹が基盤とする
だから、この両者が組んで袁紹を封じ込めば彼は勢力拡大をしにくくなり、
曹操の脅威にはならないという意見だ。
だが、曹操は袁紹軍の実力を甘く見ているようで、わざわざ公孫瓚と組む
必要などないと述べたものである。
俺の献策は失敗に終わりかけたが、曹操の腹心である荀彧が
助け舟を出してくれた。
「袁紹は確かにろくでもない人物ですが、それでも大軍を擁していますし
何より良将が多くついています。なので、ここは袁紹を自由にさせないのに
尽きるでしょう」
「ううむ、君が申すなら間違いあるまい」
「では、風魯将軍が提案したのだから公孫瓚の陣営に行ってくれるな?」
俺は心の中で荀彧に感謝したうえで、曹操の命令に応じ幽州へと向かう。
それに久々に公孫瓚に会えるのも楽しみでならない。
まぁ、劉虞が討たれてしまったのは残念だが。
「そうか、丁度我々も袁紹の勢力を脅威に感じていたところだから
願ってもない話である」
幽州に到着すると彼は俺を存分にもてなした上に
この提案を承諾してくれた。
すると、その話を聞いた袁紹は顔をしかめて
腹心の
「ここはどう動くべきであるか」
これに田豊は迷わず答える。
「曹操と今からでも通じて手を出さないということを
約束するべきです」
「そうか、うむ、わかった」
彼の献策を受け入れた袁紹は、かつて門前払いした俺に
旧知の仲だといってすり寄り、不可侵条約を結ぶから
公孫瓚と手を組まないでくれるか、と言ってきた。
俺は一先ず曹操にそれを伝える。
すると、曹操は荀彧の献策を受け袁紹の誘いに応じる構えを見せた。
「俺達には夢こそあるが、まだ実力が十分ではない。
だから、今は荀彧の申す通り袁紹と手を組むべきである」
前まであれほど袁紹を軽視していた曹操が
急に心変わりするのだから荀彧の力は絶大だ。
結局、俺の思った通りとはいかなかったが、
それでも後顧の憂いを絶った曹操は急速に勢力を拡大し、
また、俺も曹操から恩賞を拝領したのである。
※人物紹介
田豊:袁紹配下の策士。
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