第24話 董卓成敗 Ⅱ

 俺が長安へ出向いている間に江南の地は大変なことになっていた。


 その一番の理由は孫堅が討たれたことだ。


 事の発端は孫堅と同盟を結ぶ淮南の袁術が彼を唆したことである。

荊州けいしゅう劉表りゅうひょうが孫堅の首を狙っていると。


 「なに、それはまことか!しからば討伐いたさん!」


 これに孫堅は兵を挙げて荊州へと侵攻。

対する劉表も家臣の黄祖こうそに撃退を命じた。


 戦いは終始、孫軍の優勢であったが黄祖隊の放った矢が偶然、孫堅の急所を射抜き、孫堅は命尽きてしまう。


 その後、孫堅の子である孫策が何とか家臣団を束ねようとしたが、

混乱は治められずに袁術のもとへ逃れてしまったのだ。


 こうして今、江南の地は劉表やその他孫呉の敵対勢力によって支配されている。


 (ということはここにいては危険だな)


 地元民から話を聞いた俺は孫堅の後を追って江南から淮南に向かった。

しかし、そこで俺は門前払いを喰らってしまう。


 「なにぃ、風魯が来ているだと?召し抱えても良いことはないから

追い返すのだ。うちだって余計な人物を受け入れるほどの余裕はない」


 全く、袁術といいその兄の袁紹といい、すぐに俺を追い返すのだから。

まぁ、住ませるメリットがないのは認めるが・・・


 (しかし、この後どこへ向かったものか・・・)


 俺はしばらく路頭に迷っていたが、遂にこれからの方針を決める。


 (そうだ、曹操のもとに行こう)


 前に蟄居となっていた俺を助けてくれたくらいだから、

曹操は少しくらい俺を良く見ているように思えたのだ。


 「ほう、風魯が来ているのか」


 兗州の太守となっていた曹操は野望実現のために

着々と力を蓄えている。


 「しかし、奴を受け入れたとて良いこともありますまい」


 曹操配下の多くは俺を受け入れることに反対したようだが、

この男、荀彧じゅんいくだけは受け入れるに値すると言い切った。


 「風魯は確かに有能とは言い難い。だが、彼の人脈は素晴らしく

覇業を成すためには欠かせないかと」


 荀彧の意見に曹操は手をたたいて喜び、


 「俺の思った通りだ。さすが我が子房である」


 と前漢の初代皇帝劉邦りゅうほうに関する故事に登場する智者、

張良ちょうりょうの字である子房しぼうにかけて

彼を褒めたたえて曹操は俺を迎え入れる。


 「いやいや久しぶりだな、風魯将軍」


 「わざわざ受け入れてくださりかたじけない限りです」


 こうして俺は曹操に迎えられたが、今回の立場は客将ではなかった。


 「貴殿はこの曹操の配下になる気はないか」


 曹操は俺を配下にしようとしたのだ。

もちろん、断ったら追い出されるかもしれないので了承し、

兗州の中に所領を与えられて曹魏の武将となったのである。


 だが、呼び名は依然として風魯将軍であり、

結構な厚遇を受けた。


 曹操は人脈のある俺を配下に加えて外交を担当させ、

今後曹魏は急成長していく。

 そして俺としても三国志を代表する武将、曹操につけたので

将来は安泰だと思うのであった。

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