第23話 董卓成敗 Ⅰ

 中国四大美人の一人である貂蝉は俺、風魯の妹だった。


 ・・・とはいっても幼いころに、はぐれてしまったようなので

人生の途中に転生した俺は全く知らなかったのである。


 (しかし、妹である以上嫌な思いをさせるのは可哀そう・・・)


 俺は兄妹であると知ったばかりなのに、そういう感情を抱いてしまうほど

彼女は美しい。


 「王允殿、私はそのお願いを受けることができません」


 俺の返答に王允は驚く。


 「なに、ではこのまま董卓を生かしておいてもよいのか!?」


 だが、俺は何を言われようと彼の策を受け入れる訳にはいかない。

ただし、無策というわけではなかった。


 「王允殿、実はもっと良い作戦があります」


 「むむ、それはまことか!」


 「はい」


 俺は思いついたのだ。

貂蝉を嫌な思いにさせず董卓を成敗する方法を―


 

 「では、手はず通りに」


 「あいわかった」


 ある日、王允は計画通りに俺を董卓に差し出して、


 「この者は董卓様を殺めようとした諸侯の一人、風魯です」


 「洛外で取り押さえましたのでご処分を」


 と言上を述べる。


 「そうか!王允、ご苦労であった」


 董卓は思わぬ顔が目の前に差し出されてあるので、

笑いが止まらない。


 だが、俺の出番はここからである。


 「董卓殿、待たれよ」


 「なんだ、風魯。命が惜しくなったか?まぁ、せいぜい泣くと良い」


 「いや、違います。あの王允こそ、董卓殿を殺めんとする逆賊です」


 俺は淡々と王允の計画を董卓に打ち明けた。

すると、董卓は表情を一変させる。


 「な、なにぃ、王允が貂蝉を使ってこのわしを!?許さぬ!!」


 董卓はひどく怒りを露わにした。

その横には呂布が控えているが、彼は今にも槍を持たんとしている。


 「おのれ王允!!奴らをまとめて成敗するのだ!!」


 「あと、貂蝉という悪女も生かしておけん!ともに成敗いたせ!!」


 董卓の指示に呂布は我慢の限界に達したようで、


 「貂蝉は何も悪くないっ」


 と突然声を荒げたかに思うと、

すぐさま槍を手に取る。


 「りょ、呂布・・・!何をする気だ!?」


 「決まっているだろ!よくも貂蝉を悪女呼ばわりして殺害しようとしたな!」


 「成敗されるのは董卓、お前の方だっ」


 その瞬間、董卓の首はすっ飛び赤黒い血が天井まで噴き出したのである。

だが、その時すでに俺の姿はなく、予め用意してあった馬で脱出したのであった。


 (すぐに逃げなければ・・・!)


 董卓に計画を密告したのは俺であるから、呂布に首を狙われる危険性があったのだ。


 幸いにもいち早く変事に気づいた者たちが慌てだしたので、俺はその混乱に乗じて長安からも脱出できた。


 その後、俺は関所に差し掛かったが門番たちも知らせを聞いて

右往左往しているところであった。


 「これからどうなるのだ!?」


 「俺たちはどうすればいいんだ!」


 なんて門番たちが混乱している隙に俺は素通りに成功。

その後、馬に鞭を打ち付けながら長躯し、江南へと戻った。


 しかし、この時俺はまだ不在のうちに起こった変に気づいていなかったのである。

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