第11話 董卓全盛の中で Ⅱ
俺は今、まやかしにでも遭っているのだろうか?
そう考えてしまうくらい、俺のことを
特に丁原が討たれてから顕著になっている。
(俺は董卓の怒りを買ったであろう人物だ。
その俺になんで媚びへつらうのか・・・?)
俺はそこが甚だ疑問だが、どうやらこれは怒りを買った人物が生存している
というのがミソらしい。
すでに丁原とともに董卓討伐を計画していた、という事実は
噂として広まっている。
それで丁原は討たれたのに風魯は討たれないのは確かに変である。
そういう観点から”董卓は余程風魯将軍のことを許しているらしい”
という話になり、
(では、あの悪逆非道な董卓の前で失敗しても風魯将軍にすがって
とりなしてくれれば助かるかもしれない)
との考えに各々が至っているらしい。
まぁ細かな失言で家臣を吊るし上げてしまう董卓を主に持っていれば、
そう保険をかけたくなるのも分からなくはないが。
そんなある日のことである。
董卓の使者と申す者が現れ、俺は携えている書状の内容を考えながら迎えた。
「本日はわざわざお越しくださいまして何用で」
俺の質問に使者は押し付けるように書状を渡してきた。
(なんだか態度が悪いなぁ)
そう思いながらも俺は書状を開く。
そして、言葉を失った。
(な、な・・・、俺に蟄居を命じるだと!?)
そこに書かれていたのは俺、風魯将軍に官位を剥奪したうえで蟄居させる
という内容だ。
「・・・ということですので、これより一切の外出を禁じます」
とキツイ口調で俺に言いつけた使者は帰っていったが、それと入れ替わるように
門番の兵士が続々と邸宅の前に集まってくる。
俺が外出しないよう見張るようだ。
これは後で聞いた話だが、董卓は俺に董卓の臣がすがっていることに
たいそう不満を持っていたらしい。
だから、腹心李儒の反対をも押し切って蟄居の命令を下したという。
そして、閉じこもりの生活が始まった。
とはいえ、ぼーっとしているのも無益なので様々な兵法書などを読み漁ることに。
蟄居している間に読んだ書物の量は数えきれない。
こうして希望をもって将来のために本を読めるのも、董卓の命がそう長くない
ということを理解しているからである。
俺は静かに、静かに本を読みながら暮らした。
だが、その胸の内にはこのままでは終わらないという強い気持ちがあったのだ。
(少し読むのも疲れたな)
俺は障子を開いて庭を見渡す。
季節は冬から春へ移ろうとしている。
庭に根を張る梅の木はつぼみを膨らませていよいよ咲きほこらんと
その時を待っていた。
その姿に俺も勇気をもらう。
そして現実にこの董卓独裁の世は終わろうとしていたのである―
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