第7話 董卓の入京 Ⅰ
「何!?このわしに謀反の疑い!?」
何進はその義理の弟である
「これはすぐ弁明に参らねば」
何進は立ち上がり参内しようとしたが、何苗に止められた。
「大将軍の妹様もこの謀反を計画した一人と疑われて既に処刑されたそうです!
大将軍が今弁明に向かっても何太后と同じ運命を辿りましょう」
「な、なにっ!何太后が殺されたとな!?」
これに何進の足が止まる。
そして、彼の心中には無念さよりも怒りが先立つ。
(ああ、愛する妹よ・・・、きっと宦官たちによって
殺されたに違いない・・・!)
「宦官め!さては身の危険を察して、わしら兄妹を陥れる魂胆かっ」
何進の怒りは爆発する。
「もはや退く道はない!宮殿へ進軍し憎き宦官を討ち果たす!」
「者ども!言っておくが我々は逆賊ではない。宦官たちを一掃し帝に拝謁する。
帝は必ずや我らの功績を認め、たたえ給うだろう!!」
こうして何進は軍勢を集めにかかった。
だが、軍勢を集めにかかったのは何進だけではない。
「なにっ!何進がこの洛陽に攻めかかってくるじゃと!?」
宦官たちも同様である。
彼らが謀反の疑いをかけたと何進は思っているようだが、
実際にこの話を流したのは袁紹や俺、風魯であり
宦官たちにとっては身に覚えがない。
それだけに狼狽もひとしおであったが、
彼らは何より命が惜しいので俺や袁紹、さらに
都を守るよう厳命した。
対何進軍は都の郊外に布陣し周りを固めたが、その陣中で俺と袁紹は顔を合わせ
静かにニコッと笑いあった。
(全て計画通りにきているぞ・・・!)
そして前方に何進率いる大軍が現れると俺と袁紹に加えて、
事前に話を通してあった朱儁や鮑信といった将軍がさっと禁門の両側に下がり
担当の兵が禁門のかたい扉を開ける。
これに何進は一瞬困惑したが、すぐに理解する。
(なるほど、これは都に乱入し宦官たちを討てとの合図だな)
味方の軍勢を横目に何進の軍勢が乱入し、俺らもその後に続いた。
「かっ、何進の手勢が入ってきたぞ!!」
「馬鹿な!風魯将軍たちの軍勢はどうしたのか!?」
「俺たち宦官は全ての将軍を敵に回したようだ!」
何進の軍勢が宦官の集う禁裏へと殺到し、王都洛陽は混乱を極める。
「
長らく漢王朝に仕えてきた
では、霊帝はというと・・・
すでに病没していたのである。
まだ宮外に公表していないため、それを知る者は董承など極わずかだが
しばらく前に崩御しており、その長男である
公表していない主な理由として、政情不安があげられた。
即位した少帝はまだ幼いので、霊帝が生きていることを装っているのである。
では、話を戻そう。
何進はこれまで俺らの思惑通りに動いていたが、
一番肝心なところで想定外のことが起きてしまう。
それは何進が禁裏で宦官に殺されたと聞いていた何太后を見つけてしまったこと。
「そ、そなたはまさか・・・!!!」
「あ、兄上・・・」
妹の無事を知った彼は途端に宦官を討伐するという気を失ってしまった。
結局、宦官の多くを逃してしまったばかりか、何進は宦官たちを許すと公言し
都を退去してしまう。
こうして宦官たちは再び政界に復帰し、俺たちは何一つ得られなかったのである。
※人物紹介
・少帝:霊帝の跡を継いだ皇帝、劉弁、現代ではかなり幼いイメージだが、
即位年齢は後漢で四番目に年長である。
・陳留王:後の献帝、劉協、少帝の弟。
・董承:漢室において権力を持ち、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます