第3話 黄巾の乱 Ⅲ
俺は時代区分で言えば確かに三国時代にいる。
しかし、今はまだその初期であり魏も呉も蜀も建国されていない。
曹操は地方の一武将に過ぎないし孫権の孫氏はまだその父、孫堅の代。
孫堅も江南(揚子江の南)付近の一武将。
劉備に至っては黄巾賊討伐のため集まった義勇軍のリーダーに過ぎないのである。
このように中華地域の各地に群雄がひしめいているが、
統一王朝”漢”の権威もまだ完全に衰えてはいない。
俺はその漢王朝の将軍、風魯に転生したわけだから
劉備からすれば明らかに格が上なのだ。
しかし、劉備の将来を知る俺は彼をお粗末になんか扱わない。
「私、劉備、字を玄徳と申す者。黄巾の乱平定のため、
僅かながら同志を募りました。どうか将軍の軍勢にお加えいただきたい」
劉備が代表して口上を述べる。
その表情は平伏しているのでよく見えないが、
姿からして好青年といった印象だ。
ただ、正直言ってかっこいいか、と言われると
少し俺のイメージとは違う。
それでも、この軍勢によく尽くしてくれそうな感じがした。
「それは非常にありがたい話だ。丁度戦況が良くないところだから、
あなたたちが参陣してくれたことに感謝する」
「共に黄巾賊を退治しようではないか」
俺は劉備に話しかけつつ、感極まってしまった。
あの劉備玄徳に会えたのが何よりうれしい。
「しょ、将軍・・・?」
俺の目がウルウルしているのに気付いた彼は少し困惑の表情を見せた。
「いや、すまない・・・。あなたのような人物に会えて感動している次第・・・」
「・・・!」
こうして面会は終わったが、劉備は俺の対応にどんな感情を持ったのか?
まぁ、いずれにせよ劉備はこの部隊に加わったのである。
そして、数日後・・・。
「風魯将軍!」
「どうした公孫瓚!?」
「しびれを切らした黄巾賊軍が攻めてきます!」
遂にその時が来たのだ。
そう、決戦である。
「将軍!この劉備玄徳、先陣を仕りたく存じます!」
一歩前に出て劉備がこう述べると後ろにいる関羽と張飛も頷く。
「よし、先鋒は劉備隊に任せた!中軍は公孫瓚、
後詰は劉虞にそれぞれ任せる!」
こうして、真っ先に劉備隊が張飛を切り込み隊長にして黄巾軍に突入する。
「おりゃぁぁ!!これでも喰らえやぁぁ!!」
張飛の働きは凄まじく、黄巾賊の首が噴き出るように飛んでいく。
これには黄巾軍も動揺して逃げる兵と状況を知らず前に進む兵で混乱をきたした。
「今だ、公孫瓚。敵は混乱しているぞ!」
「行って参ります!」
公孫瓚は自らの汚名を返さんと奮闘し黄巾賊の首を刈っていく。
そしてついに黄巾賊の大軍は散り散りとなり、撃退に成功したのである。
その後、中華全土で官軍が優勢となり黄巾の乱は平定された。
しかし、乱が起きた原因である食糧難などの諸問題は解決されなかったため、
各地で混乱は続くのである。
※人物紹介
・劉備:漢室の一族で中山靖王の末裔、没落した身だが漢の再興に尽力する。
・関羽:劉備・張飛と桃園の誓いを結んだ義兄弟、文武に優れ後に神格化。
・張飛:極めて優れた武勇の持ち主、短慮で関羽と劉備でないと制御できない。
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