第12話
最初は竜からだったかも知れない。
でも、拒み切れなかった。竜を愛していたから。
「愛してる涼……」
竜が私にそう言うたびに幸せな気持ちになるけど、怖くて堪らない。
心の何処かでは間違ってると思ってるから。
でも、竜から離れるなんて出来ない。もう、後戻り出来ない所まで来てしまった。
「お、仲直りしたのか? 」
次の日二人で登校した私達に片桐君が声を掛けてきた。
「……まあな。それよりお前大丈夫なのか? テスト」
「うわ~そうだった! 嫌な事思い出させるなよ」
二人のやりとりを見て、笑ってた私に早織が聞いてきた。
「大丈夫? 涼、竜君とは……」
早織には本当の事を話した。親友にまで嘘は付きたくないから。
「そっかあ。涼、良かったね」
早織に言われて涙がでてくる。たとえ一人でも分かってくれる人が居るだけでも嬉しい。
堪え切れずに泣き崩れた私に優しく早織が背中を撫で励ましてくれた。
「今日買いに行かないと、まにあわないよ。プレゼント」
泣きやんだ私に早織が言う。そうだった、竜のプレゼント。
誕生日は明日に迫っていた。
「早織、これはどうかな? 」
二人で竜のプレゼントを選ぶ。
ああだ、こうだ言いながら。幸せで胸が一杯だった。
「う~ん。竜にはやっぱりこっちの方が良いかな? 」
散々迷ってプレゼントは決まった。二人お揃いのストラップ。名前を入れてくれると言うので、明日取りに来ることに。
「明日かあ。楽しみだね! 涼」
明日は誕生日だから早く帰らなくちゃ。
ケーキ焼くから一度家に帰ってから取りに行こう。
竜の誕生日の朝。いつもの様に竜を起こしに行く。寝た振りした竜をキスして起こし、二人だけの朝食を取る。
「竜、早く食べなきゃ、また遅れるよ」
片手で食べながら、もうひとつの手は私と繋がっている。竜が一時でも離れたくないと言うから。
家から、一歩でも出たら私達は姉弟で。だから余計にそう思うのだろう。
「涼、今日は……」
「あっ、竜は稽古しないと駄目だからね! 私は忙しいの!」
笑って言ったら、竜も笑い返して握ってる手に力を入れた。
「痛っ、竜~やったわね?」
お返しにキスを。竜は切なそうに言った。
「涼、反則だよ。ずるい」
幸せは泡のよう。
膨らんで。
いつかは、なくなって、しまうもの。
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