第11話

 あれから涼と僕は、お互いを避けながら生活している。

 毎朝、僕を起こしに涼が部屋へ来る事も無い。


「また遅刻かよ竜。姉ちゃんはちゃんと来てるのにさ」

 片桐の奴にまで言われる始末。

「うるせえ……」

 同じクラスに居るのに涼の方を見ない僕に片桐も何か有るのを感じてる様だ。

 しきりに、涼の事を話題にするから、好きなのかと思ったが違うらしい。

「喧嘩したんだよ、悪いか!」

 きつく睨み付けた僕に片桐はもう何も言わなかった。


 学校からの帰り校門の所で告白されて付き合う事になった木村小夜が待っていた。

「美月君、一緒に帰ろ~」

 好きでもないのに告白されてOKした。誰でも良かった。

 違うクラスの同級生。たまたま、タイミングが良かっただけ。

 涼が好きな人が居ると言ったのは嘘だ。何故か分からないけど僕にはそう感じた。

 だから他の女と付き合う事にしたんだ。最低……な人間だ。


「ねー。竜って呼んでもいい?」

 小首を傾げて話し掛ける小夜。充分可愛い子なのに好きになれたら、どんなに良いか。

「良いよ、おれも小夜って言うから」

 僕の言葉に顔を赤くする小夜。罪悪感にさいなまれる僕。

 二人で並んで帰ってたら先に歩いてる涼を見掛けた。

 家に着くと涼がこっちに気が付きそのまま立ち止まった。


 涼が哀しげな顔で僕を見つめている。ほらっぱり僕が好きなんだろ?


「じゃ、小夜明日な」

「うん。竜、明日ね~」

 小夜は手を振り、何度も振り返りながら帰って行った。


「竜、送って行かなくていいの? 駄目じゃない女の子に送って貰うなんて」

 なんで、心にもない事を言うんだろう。僕の愛しい人は。

「別に、僕の家の方が近いし。涼には関係ない」

 その言葉に涼は目に涙を溜め、泣かない様に唇を噛み締めてる。昔の幼かった頃の様に。


「涼、ゴメン」

 肩を抱き家へ入る。お婆様に見付からない様に涼の部屋へ行く。

「涼、泣かないで。こっちを向いてよ」

 涙に濡れた顔を上げた涼はとても綺麗で……。僕は思いが溢れて、とまらなかった。


「いやっ! 竜、止めて!」

 泣き叫び、止めてくれと言う涼を無理矢理自分のものにした。


 時が止まる。


 再び動き出した時。


 僕らは。


 禁忌を冒した、罪人となった。

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