第10話
人は、哀しみで死ねるのだろうか?
兎は一羽だけでは生きてられない。では、わたしは?
わたしはひとりで生きていられる? 竜のいないこの世界で。
少しだけ開けてあった窓から、朝の爽やかな光が射して、いつもより早く目が覚めた私は、散歩をしようと部屋を出た。
「う~ん、いい天気!」
庭に立ち大きく伸びをして声に出すと。
「そうだな――」って、返事が返った。
『竜?』
そこには芝生に寝転び、太陽に手をかざしている竜がいた。
「おはよう! 早いのね竜」
ああ、声は震えてないかな私。自然に話せている?
「誰かさんが、起こしてくれないお陰で、最近遅刻ばっかりしてるからな」
私の方を見ようともしない竜。でも、話はしてくれるんだ。それでもいいけど……
「もしかして……竜、寝てないの?」
「ああ……」
「駄目だよ。ちゃんと寝ないと体壊しちゃう」
「涼、お願いがあるんだ。少し寝たら起こして……」
そう言ったまま、竜は私の膝で寝てしまい竜の髪を撫でる私。
穏やかな朝の始まり。
人はひとりで生きていけるかも知れない。
でも、わたしは。
死んでしまうかも知れない。
竜がいなければ……
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