第5話

 僕が怒っていたら、涼が心配そうな顔をするから仕方なく笑うと、涼も笑顔を返してくれた。

 それだけで僕の心臓は爆発しそう。

 何で僕達は、姉弟なんだろう。

 ――神様は、意地悪だ。


 学校に着いて僕達は教室に入った。二人とも同じクラスだ。

 席は離れているけど、いまは涼の顔を見るのが辛い。

 席に着いた僕に、前の席に座っている片桐が話し掛けて来た。


「竜、今日もお前のねえちゃん絶好調に綺麗だな。いつも一緒に居られて羨ましい」

 いつもだったら、笑って受け流していたけど、今日の僕はとてもそんな気分じゃなかった。

(なに言ってんだ、羨ましいだって? お前こそ僕は羨ましい。他人なんだから。好きになっても良いんだから)


「おい、冗談だよ。そんなに怖い顔するなよ」

 僕は相当顔に出てたらしい。どうしたんだ? いつものポーカーフェイスが今日は出来ない。


 いつもの僕らしくなく、今日は取り乱してしまった。

 涼が先生に注意されていて、気になって視線を向けたら、たまたま涼と目が合った。

 いつもだったら、そこで涼が微笑む筈なのに、あり得ない事に僕から目を反らした!


 ――ショックだった。

 今まで涼に無視された事なんかなかったのに。

 やっぱり好きな人が出来たから、僕のこと嫌いになったの?

 パニックに陥った僕は授業の事など、耳に入らなかった。

 気が付いたらお昼になってて、先生に呼び止められた。


「美月どうした? 具合でも悪いのか。珍しいな、お前が授業中にボンヤリしたなんて」

 普段の僕は真面目な生徒だから心配になったんだと思う。


「大丈夫です。だいぶ良くなりましたから」

「そうか、きつかったら我慢しないで保健室に行くんだぞ」

 先生と別れて教室に戻ろうとした時、二年の女子が僕を呼び止めた。


「美月先輩、好きです! わたしと付き合って下さい」

 また、告白された。

 僕はお決まりの台詞を言う。

「ごめんね、おれ好きな人がいるんだ」

「やっぱり駄目ですよね。先輩カッコイイし、彼女いると思ってました」

 今度の子はダメ元で告白したらしくアッサリと引き下がった。

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