第3話 容子のお勧めの
「千鶴子、ここ、ここ!」
小洒落た天井の高いログハウスのレストラン。
千鶴子は初めて入るが、容子のお気に入りのレストランらしい。
メニューが女性の好みそうな内容が多いせいか、女性客が9割以上で、既に14時を回っていても、空席は無く大繁盛している様子。
「容子、ごめんね~、せっかくの休日なのに!」
「いいよ、いいよ~、千鶴子が大変な1日だったんだから!私には、聞いてあげる事くらいしか出来ないけど」
容子には、恋人はいないが、男女ともに友達は多く、休日は忙しく過ごしている事が多かった。
「それがね、聞いてよ、太志が私と別れたかった原因は何だったと思う?」
太志に言われた時から、頭に血が上って、一刻も早く誰かに聞いて欲しかった千鶴子。
「そういう事を確認したんだ、スゴイ、千鶴子!」
「だって、気になるじゃん」
聞いておいて、自分に改めた方が良いところが有るなら、今後の参考にするつもりで尋ねたのだった。
「うん、確かにね、私も、片桐さんの新しい彼女を見た事は無いから何とも言えないけど、若さとか?男の人って、1歳でも若い方が好きっていうし」
「そうそう、それも絶対有ると思うんだけど、それなのに、太志ったら、『色気』って言ったの!信じられる?3年も付き合って来て、そんな事、今まで一度だって言わなかったのに。いきなり、別れる理由に、それを挙げて来たなんて!」
興奮して、テーブルを両手で叩きながら堰を切ったように話しまくった千鶴子。
「はあ~?今さら、それは無いよね......」
容子も溜め息混じりで言った。
「それを要求してきたいなら、確かに、それを叶えられる人と、どうぞどうぞご勝手にって気持ちになるじゃん!」
「うん、ごもっとも!」
千鶴子の勢いに押されながらも、傷心の友人を慰めるように頷く容子。
「あ~、こんなだから、私、フラれてしまうのかな?」
「そこはやっぱり、男と女の違いだよね~!私は、千鶴子に痛く同感だけど、男側の意見としては、どうなんだろ?あっ、そうだ、マスター!」
ちょうどそのタイミングで通りがかった、レストランのマスターを呼び止め、千鶴子の意見を話し共感を得られるか試みた容子。
「う~ん、僕だったら、彼氏さんの気持ちも分かるけど、お色気ばかりが女の魅力の全てでは無いと思うな~」
そのマスターの共感混じりの意見が嬉しくて、ついマジマジとマスターを見上げた千鶴子。
高身長に広い肩幅、優し気な目元の30代前半くらいの年齢。
自分より年上の余裕を感じさせるその風貌と振る舞いに、少し前に抱いた不快な失恋の思い出も、スッキリと浄化させられたように感じた千鶴子。
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