『闇の主とレベルアップ』
額から流れる汗は小さな水たまりを床に作り、それを止めることができないほどのプレッシャーが押しつぶさんとする。
「君が、彼女の仔が一柱、で、いいんだよね?」
黒よりも黒。
闇に溶け込まれればそこに居るかすらわからなくなりそうな黒が居た。
「左様でございます。」
かすれる声で何とか伝える。
錬金神により闇の管理を任されたカラスだったが、第一段階として小型の闇を作り出した。
そのあと、愛用のメモに今後の予定を書き連ねている途中で自分の領域にソレが入り込んだのだ。
ソレは豪華な椅子に足を組んで腰掛けながらカラスを見下ろす。
「ふむ、で、このネズミは君が造ったと?」
「おっしゃる通りにございます。」
どこから捕まえてきたのか、プラリ、と脱力したネズミ型の闇がソレにつままれていた。
カラスの目の前にネズミをポイっと投げ捨てたソレは、足を解いて両ひざに両肘をあてて覗き込むようにカラスを見る。
「実に面白い発想だ。君だけで考えたのかな?」
「いえ、マm…母上の御意見もうかがいました。」
「ふふふ、正直、だね。」
ソレは立ち上がるとカラスの前に膝をつく。
そっとカラスの頭に手をのせるといつくしむような動きで頭を撫でる。
「変なことをしないならそのまま続けるといい。そう、主王がために、人の絶望を。それだけを、忘れるなよ。」
°§¶ζ
小型の動物を闇に擬態させることに成功したカラスは小型の中でも大きい方の生物に擬態させる実験を始めた。
「…あれ?私、何かを忘れている…?」
ふと気になって首をかしげる。
が、まあ、忘れることなら、そこまで重要ではなかったのだろう。
「まあ、いいでしょう。」
フンフフーンと機嫌よくカップを持って隣の部屋に移動するカラス。
あ、と何かを思い出したのか、懐からメモを取り出す。
カリカリと何かを書き記し、カップから飲み物を飲もうとするが、空だったようだ。
キッチンに歩いていくカラス。
残されたメモを覗けばこんなことが書いてあった。
「次の実験では闇ゴブリンの作成実験。
予定
ネズミと同じようにシャドーコアによる記憶模倣実験
成功したら疑似内臓創造のために解剖記憶実験
失敗し
主王がために絶望を 」
^^^^^
キイキィと鼠の声が聞こえたかと思うと暗がりから暗がりの雫がはい出してきた。
排水口の隙間から降る光に照らされて映ったのは真っ黒い鼠。
それも、13㎝ほどもある大きな鼠の群れだった。
「キュウウウ!」
威嚇するラムちゃん。
なぜかたじろぐ鼠。
カマキリの威嚇をするマッド。
騒ぐコメ欄。
左右にシャ!シャ!と動いていたマッドはグッとしゃがむとにょん!と、ネズミに向かって思いっきり飛び込んだ。
キイ!と、マッドの着地点に居た鼠がよけてネズミの中にできた丸い空間でぺしゃッと倒れる。
ぽくぽくぽくちーん、と全く謎な奇行にネズミもコメント欄も目を点にする中、ラムはにゅるにゅる近くのネズミに這いより、マッドに注意を向けているネズミを後ろから取り込んだ。
が、ショワァ!と、まるで幻影を攻撃したかのようにネズミはラムの体内で消えた。
とたん
『EXPが設定された生物が倒されました
ヘルプにEXPの表記が増加しました
レベルの設定された生物がレベルアップしました
ヘルプにレベルの表記が追加されました
上記の事柄によりメインストーリーが判明しました
詳しくはストーリー進行もしくはヘルプをご確認ください
上記の事柄によりステータスウィンドウの全機能が解放されました』
ワールドアナウンスが流れると同時にステータスウィンドウが勝手に開き、追加…いや、解放されたメニューが見え、所有アイテム以外の項目が表示されるようになったことがわかる。
最たる例はこのステータスだ。
^^^^^
~name=マッド=ディガルド~
~gender=女性~
~occupation=獣士~
~level=0~
~status=0~
~strength=1~
~defense=1~
~speed=1~
~dexterity=1~
~metabolism=1~
^^^^^
簡単に説明しなくてもわかるかなぁ…
上から名前、性別、職業、レベル、ステータス(ポイント)、(腕力的な)力、(防御的な)力、(瞬発的な)速度、器用さ、抵抗力(代謝)だ。
大体わかるかな…最後の代謝は体に異物(毒など)が入った場合の抵抗力及び回復速度を表している。
ちなみにレベルが上がったのはラムちゃんで、ステータスはこんな感じ。
^^^^^
~name=ラム~
~gender=女性型無性~
~race=ブラッドナイトスライム~
~level=2~
~status=15~
~strength=1~
~defense=12~
~speed=2~
~dexterity=1~
~metabolism=13~
^^^^^
何をもって1とするかは各種族の王の.”1/1×10^100”が1となる。
すっごい簡単に言うと無量大数に百垓をかけたくらい大きな数字分の1が1ということになる。
うん、もっとややこしくなった。
むくっと起き上がったマッドはトテテテとラムの元に走るとそのぷにぷにぼでーを抱き上げ、触り心地に変化がないかムニンムニンとラムを変形させて確認する。
「ん、もだい、な、なななーし!」
問題なかったそうだ。
となれば、おびえる鼠はもはやラムが取り込めば一瞬で溶ける経験値。
スッとラムを地面におろすとネズミの集団に向かって指をさし、
「ご!」
と、一声。
ラムは先ほどの二倍の速さで鼠を溶かした。
マッドがステータスを確認すれば
^^^^^
~name=ラム~
~gender=女性型無性~
~race=ブラッドナイトスライム~
~level=3~
~status=20~
~strength=2~
~defense=14~
~speed=3~
~dexterity=2~
~metabolism=17~
^^^^^
と、増加していた。
マッドの目が妖しく光り…
その後、地下下水道にはご!という声とネズミの悲鳴がこだましたそうな。
あとがき
ちょっと遅れました、
威嚇するラムちゃん。
なぜかたじろぐ鼠。
カマキリの威嚇をするマッド。
騒ぐコメ欄。
というところで鼠たちがたじろいだのは、自分たちを作ったカラスと同じ感じがしたから、あれ?攻撃していいやつ?となったため。
そんなことより威嚇するマッドがかわいい。
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