『バトルモードで暴れる!回』



 寝落ちの翌日はコラボの予定があった。

 寝ぼけ眼でスライムの作ったご飯を食べるマッドの部屋にピンポーン(玄関前呼び鈴)と誰かが訪ねてくる。



「( ,,`・ω・´)ンンン?」



 りんごヨーグルトを食べるのを止めてスライムに乗って玄関に向かう。

 前回のを踏まえて覗き穴から外の覗くとかなり離れた位置にマネージャーが立っているのが見えた。

 バアン!

 そもそもその速度で開けなければいいんだよ?



「おはようございます、トモコ様。」



「はよ!」



 うやうやしく一礼するマネージャーは横によけたスライムの横を通り、後ろ手に扉を閉めて上がる。


 ( ,,`・ω・´)ン~♪とご機嫌なトモコも食卓に戻っていった。


 パクパクと大きく口を開けてヨーグルトを食べるトモコの前で、その姿を微笑ましく見つめながらカバンから資料をてきぱき取り出すマネージャー。

 中身のなくなったパックをスライムが回収し、口の中をスライムがきれいにした後、マネージャーが話し出す。



「今日はバトルモードコラボの日です。コラボ相手はシャクラ=ダオラさんと山吹ブマヤさんのコンビ、『黒山吹』とのトリプルで5連続winnerできるまでやめまふぁいぶといった企画で…」



「( ,,`・ω・´)ン…」



「…あーっと、まあ、三人で楽しく遊ぼうねってお話です。」



「( ,,`・ω・´)ン。わた、わ、か、た!えへへ…」



「はい(全能)。なので、16:30までは自由時間ですよ。」



「( ,,`・ω・´)ン…ラム、ちゃ、ん、んんん…」



 少し考えるような姿勢をとったトモコだったがベッドに戻るとヘッドセットを着けてログインした。

 マネージャーを放置して。



「…さく様もあんなに心配する必要はないと思っていましたが、確かに少し心配にならざる負えませんね。」



 無防備で無垢なのに妖艶でセンシティブなトモコの姿を見てスライムに出された紅茶をさすりながら少し上がった心拍数を落ち着けるマネージャーは、悪くないと思うよね。

 ちなみにスライムにもてなされてマッドがお昼ご飯!とログアウトするまでマネージャーはずっといた。



^^^^^



;たいき^

;たいき,,・ω・

;ステイ…


 コメント欄がヒュンヒュン流れるのを見ながらシャクラは集まったVを見るために見渡す。

 マーと声を出しながら口を開けてなすがままにされているブマヤとその頬をムニッムニッと横に伸ばしては戻してを繰り返しているマッドが見え、微妙な気持ちになった。

 初対面(挨拶前)からこの状態の二人はもう放置してもいいと思う。


 配信画面を待機画面からカメラに切り替えてシャクラのプライベートルームを映す。



「ようよう、ダオラ様だぞぇ。そして…」



 ムニッムニッ!マー

 ムニッムニッ!マー


;尊い

;尊み

;とうとい



「彼奴ら相まみえた時から自己紹介もせずにこの状態ぞえ?儂にどうしろと?」



「ブマヤ!マー」



「( ,,`・ω・´)ンンン?ま、ままま…ま、っど!」



 ムニッムニッ!マー

 ムニッムニッ!マー



「…儂、戦いの前に疲れとうないから、流すの?今日は、儂ら黒山吹とさくの母君であるマッド殿でばとるもーどのとりぷるを五連続ういんな?できるまでおわれまふぁいぶ?という企画をやった行くぞぇ!」



 ムニッムニムニ!マウー

 ムニムニ、ムニムニ!マママウウウウー



「…二人とも、その辺で。」



「あ、うん。」



「( ,,`・ω・´)ンンン?」



 なんとも閉まらない雰囲気でバトルモードにゴウ!



^^^^^



 とある戦場で、前衛的な家に隠れる戦士がいた。

 彼の持つ銃は7=Kという名称の珍しい7点バーストの銃で、全弾命中すれば25×7の175ダメージが入る銃だ。

 もちろん、強すぎるため地面に落ちているモノではない。

 戦線破壊物資と呼ばれる一つの戦場で一度しか投下されない物資で、更にランダムで出る物資だ。

 体のどこにあてても一撃で敵を倒せるスナイパーライフルやダメージを与えれば与えるほど早くなるライトマシンガンもあるが、この戦士にとってはこの銃は当たりだった。

 三人チームでやっているこの試合だが、この武器をとるための戦いで二人がやられ、自分一人になってしまった。

 残りのチームは12チーム。

 かなり高位の戦場であるここでは普通にあり得る数字だった。

 残りの戦闘時間は1/5。

 ハイレベルな戦士だけしか残っていないと予想できた。



「!?」



 彼の目にはありえない光景が広がった。

 彼の隠れる家の前の荒野に一人の少女が平然と歩いて出てきたのだ。

 120㎝ほどしか身長がない少女は長い金髪を揺らしながら散歩しているかのように歩いている。

 緊張が、どこからともなく戦場全体を包んだ。

 無防備な少女に標準を合わせる者、何かの罠かと警戒するもの、逃げる者。

 彼女が参加していなければ5分ほど続くはずのゲームは、最終局面に入った。

 彼女に向けた殺意を始まりののろしとして。


 パン、と、セミオートのハンドガンの音が鳴った。

 バリ!と、少女のアーマーがはじけた。


 波紋は水面を大きく揺らし、津波に変わった。


 各方向から弾丸が、爆弾が、矢が飛び交う。

 彼は危険だと判断して姿勢を低くして防弾ガラスを鋼鉄で補強したドアから外の様子を覗いた。

 淡いアーマーがすぐに光を失い、鮮血が金髪を濡らす。

 その場の全員が少女を倒すことだけを考えていた。

 だが。



「えへ、えへへへへへ!」



 紅い光が戦場を跨いだ。

 いや、小さいから早く見えただけかもしれない。

 少女はまっすぐに少し丘になっている場所に走り込み、その場で鮮血が上がった。

 立て続けに3個上がった赤いしぶきはすぐに消え、再び紅い光が移動する。

 紅い光が移動するたびに残りチーム数が1に近づいていった。

 あっという間に2になり、悪寒が戦士を包む。

 紅に包まれた白い死神が扉を蹴り砕いた。


 ゲームにならないほどの理不尽に戦士は苦笑を浮かべる。

 せめて最後に一矢、と、構えずに7=Kのトリガーを引いた。

 そして…



「え?」



 戦士の目の前には「you are game winner」という文字が輝いていた。



^^^^^



 シャクラのプライベートルームに転移した三人はしょんぼりとする。

 さっきの試合が5戦目で、それまでに4連続winnerをとれていたのだ。



「儂とブマヤの怠慢のせい…よのぉ…」



「あは…ラストのはビビったけど、あれはまあ、シャーナイ。私らのせいだわ。」



「( ,,`・ω・´)ン…ざん、んんんねん。ん。」



;マッドちゃん不敗伝説が…

;5戦目のwinner君もなんで勝てたかわかってなかったっぽいし…

;あれはシャーナイ

;しょんぼり顔のマッドちゃんも可愛い!

;ブマヤって口とじれたんだ…

;ナイスファイト!

;今日マッドちゃんを知った儂、もうお腹いっぱい



「むぅ…今くねくねしても変わらん。次いくぞえ!」



「おー!」



「( ,,`ーωー´)ンン…」



;あら、マッドちゃんお眠?

;シャクラ、マッドちゃん見て

;無理そう?

;お腹いっぱいぽ

;今日はもういいんじゃない?



「ぬ、ああ、マッド殿、すまなんだ。」



「眠そう」



「( ,,`=ω=´)ン…」



 16:30から始めた配信もそろそろ19:00。

 まだ早いかもしれないが、習慣的に規則正しい生活のマッドはかなりお腹もすいていて、そのせいで眠い。


 フラァ…と倒れそうになっては直立に戻り、またフラァ…と、かなり危なっかしい。



「む、マッド殿は限界か…さすがにぶいの者になりたてで耐久配信は厳しかったか。」



「楽しいけど、配慮不足かも。」



;そういえばそうじゃん

;デビュー3月もたってねえわwwww

;高スペックだから忘れてた

;でも、19時でお眠ってやっぱじょz…

;マッドちゃんが女児なのは当然だるお!?



「む、こめんとの視聴者も心配しておるし、今日はめておくかぇ。」



「そだね。また誘う。」



「zzz」



 #女児マッドちゃんまだお休みの時間じゃないよ

 そうしてコラボ配信は終わった。



あとがき


 FPSゲームを描写するのむつかしい…

 実際にやってて困る(話のネタ的な意味で)のは思ったよりも戦闘がサッて終わってしまう(大体負ける)ことですね。

 配信者さんのプレイを見てるとやっぱり戦闘!戦闘!って感じなんで、いいネタになるはずなんですが、何やってるのか理解できなくて…

 ハイクオリティな銃ゲー作品(カクヨムの小説)があったら教えてください…


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