『ククリナイフは獣士の武器…?鞭じゃね?』



 人気爆発中の新規ボカロPであるジアンダスタンドPの星の孕み仔を鼻歌で歌いながらマッドは冒険者ギルドに帰る。

 時間はお昼をかなりすぎたくらいで、丁度他の神子は以来の真っただ中だろう。

 この世界の住人の多い通りを抜けて冒険者ギルドに入るとガチムチではなく普通の受付嬢が座っていた。


 コメント欄は落胆半分、普通にかわいい受付嬢への興奮半分といった感じだが特に気にせずにポテポテ向かう。


「( ,,`・ω・´)ン、こ、ちあ!」


「こんにちは。冒険者ギルドにようこそ。お使いかな?」


「こ、こここれ!」


「うん?」


 依頼達成書を受け取る受付嬢は微笑まし気に最初は読み始めたが内容を追っていくにつれて顔色が悪くなっていった。


「…もしかしてなんだけどさあ、神子様だったり…します、か?」


「( ,,`・ω・´)ンンン?」


 さて、ここで思い出してほしいのはマッドが他のプレイヤーと完全に別の場所でログインしたってことと、


「えっと違うの?」


「( ,,`・ω・´)ン…」


「?」


「?」


 無言の間はしばらくつづk


『このメッセージはすべてのストーリーモードとタグの付いたスレッドとストーリーモード内チャット、ストーリーモード内スピーカーにて放送されています

IDマッド・ディガルドさん みるけいうえうさん 

以上のプレイヤーによって情報公開がされました


詳しくはストーリー進行にてご確認ください

情報公開に参加したプレイヤーにはストーリーモード内で使用できる通貨100000arufuが均等に割られて支払われます

冒険者として登録している場合、最もプライスタイルに合ったレアリティ=レア武器が送られます

商人として登録している場合、最もプレイスタイルに合った収納魔道具が送られます

傭兵として登録している場合、最もプレイスタイルに合ったレアリティ=レアの装着装備が送られます

どれにも登録していない場合、追加で30000arufuが送られます』


 あ、頼んでた武器だ!

 和やかな沈黙の間に割って入ったのは錬金神より送られる贈り物神託物の光。

 受付嬢は、ア、私神子様をお使いに来た子ども扱いしたわ、オアタ\(^o^)/と涙をちょちょぎらせた。

 光の中でふわりふわりと浮かぶのはプレイスタイルに最も合った武器。

 そう、獣士といえば鞭――


「ククリナイフ?」


「( ,,`・ω・´)ン」


 ではなくククリナイフでした。

 なぜに!?


 マッドが手に取ると光は消えて、刃渡り20㎝ほどのがっちょい(がっちりかっちょいい)普通の鉄でできているように見えるナイフだ。

 あ、ちょ、刃先を指でつつくと危ないっすよ!


「( ,,`・ω・´)ン」


「あ、血が!」


 チクリと指先を傷付け、血が流れる。

 ククリの刃に血が数滴たれれば、まるで刻まれた跡に流れ込んでいくかのように血が刃に吸われて刃腹に不可思議な紋様が浮かび上がった。

 紋様から投影されるように浮き出てきたのはナイフの性能が書かれたウインドウ。


^^^^^


=ククリナイフ=


レアリティ=レア


クオリティ=マジックイーター(2%)


=エフェクト=


 運‘営-により制作されたナイフ

 マッド=ディガルドのために生成された

 この武器は壊れることがない

 この武器は強力な魔力を内包している

 この武器はマッド=ディガルドにしか装備できない

 魔鉄により生成されたナイフ


^^^^^


 ちなみに指はHPがある限り多少の傷は一瞬(0.2秒)で癒えるため止血等の必要はなかったが、マッドのHPは指先をちょっと切っただけで2減少している。

 ちなみにゲーム内で食事等をするとHPが際限なく増える。(神子だけ)

 んーと、マッドは首を傾げた後、コメント欄で依頼の報告がまだ終わってないよ!と教えられてハッと受付嬢を見ると真っ青な顔でシュン…と萎れて縮こまっていた。


「( ,,`・ω・´)ンンン?」


「えと、自分よりもその…お背が少しアレだったので、その、こ、子ども扱いしてしまいまして、申し訳ありませんです…」


「お、ねがい、ます!」


「はぁい!今すぐ!」


 テッキッパッキと書類を片して報酬を出す受付嬢。

 マッドちゃんの空気の読めなさに救われたね!


^^^^^


 ところ変わってここはギルドが所有する訓練場。

 そして訓練場の中でも自分の武器の持ち込みがおkな所謂実戦場だ。

 マッドの背から出たルフとラムも思い思いにおかれた的に攻撃をしている。

 藁人形をGABUGABUするルフとチョコッと付いている血を消化するラムを置いておいたマッドは目の前の藁人形にククリナイフを構える。


「( ,,`=ω=´)………」


 ピクリとも動かないマッドは構えたまま寝てるようにも見えた。

 噛むのが飽きて藁人形を振り回して遊びだしたルフが口から飛ばした破片が地面にぶつかり、ドスッという音を立てたとたん。


「( ,,`・ω・´)ン!」


 目を開けると同時に藁人形に肉薄したマッドが右手でナイフを持って首筋を一線した後、中空で止めた右手からナイフをこぼれさせ、右手の真下に置いてあった左手で取るとばねの様に体をはねさせながら太ももあたりにもう一線入れた。

 約0.7秒ほどのその動作で藁人形は固定された胴体と腕を残してポロリと頭と足を落とした。


「( ,,`・ω・´)ンン…」


 コメント欄ですげえ!かっこいい!と言われるも不満気な様子のマッドさん。

 十分だよ人間の動きのぎりぎりだよと言いたくなる気持ちをこらえてもう一度。

 先ほどと同じ体勢・位置で今度はより深く足を引く。

 ほとんど開脚になった足をそのままに再び目をつぶった。


「( ,,`=ω=´)……( ,,`・ω・´)ン!」


 先ほどよりも溜めの時間を短くしたその一撃…いや、二連撃はナイフの軌跡だけを残して最後の姿勢に成っていた。

 コメント欄もえ?やは?で埋め尽くされている。


「( ,,`・ω・´)ンン。た、たたためすぎ、だた…」


 1メートルを走り寄り、首を切る抵抗に抗いながら左にナイフを振りぬいて手からナイフを自由落下で落として受け取った左手を体ごと右斜め上に挙げながら太ももを切断する。

 文面にすると簡単なことだが、それが1秒に満たない時間で行われたとすればゾッとする話だ。

 もちろん、無理やり体を動かしたのでマッドも無事ではないが、HPが3減ったくらいだ。

 そして再び構えるマッド。

 先ほどと同じ体勢のようだ。


「( ,,`=ω=´)……………」


 今度は長い。

 ついに飽きたルフが居眠りを始めてこびり付いていた血を全部吸ったラムがルフのお腹布団でもふもふしながらお昼寝を始めても溜め続け…


「…zzz」


 あ、寝てるんだわ。

 継続困難としてお世話スライムがフルダイブ装置を外して勝手に配信を終了した。

 こういうこともあろうかとさくが定型文を用意してあったのでマネージャーがマッドのページで投稿したが、マネージャーはさくにトモコへの愛をここでもいやというほど感じれてかなり怖かったらしい。



 あとがき


 寝落ち回をどのタイミングで挟もうか悩んだんですが、ここでいいかなって。

 あと、ルフは居眠り、ラムはお昼寝と差別化して書いたのは単純に戦力としての問題です。

 ルフは大狼として獣士の中では護衛や戦闘要員、ラムはブラッディスライムとして癒し(ペット)や止血などの回復アイテムの代理程度。

 なんで、ルフは居眠り、ラムはお昼寝となりました。


 まあ、深夜なのでお昼寝ではないですが。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る