ぬっこさがしすりー(優男の過去回想)



 僕には姉がいた。

 掃き溜めみたいなスラムで一人だけ儚く咲く花のような人だった。

 でも、そんな姉のことを僕はほとんど覚えていない。

 記憶にある姉は一日中ベッドで座っていて、本を読んでいる人だった気がする。

 よく僕のことを呼んでは文字や簡単な数字を教えてくれた。

 夜中に必ず別の部屋に行くように言われていたけど、それ以外はずっと一緒だった。

 泊まっていた宿が潰れるまでは。

 身一つで追い出された姉は僕を置いてどこかに消えた。

 今のボスのところだね。

 最初は大変だった。

 見ず知らずのガキだし、多少読み書き計算ができるって言っても、ボスの補佐よりできない。

 他の組織から難癖付けられたりもしたし、命からがら逃げたこともある。

 金がないときはひもじい思いもしたし、何もうまくいかないこともあった。

 そして、かなり時間がたって、仕事ができるようになって、忙しさから姉のことを思い出すことを忘れていたころだった。

 って言っても、つい最近…

 3か月くらい前なんだけどね?

 姉が、地下で遺体で見つかった。

 鼠に食い荒らされたみたいに体のあちこちが足らなかったけど、姉だってわかったんだ。

 大事に抱えていたバッグからは僕にあてた手紙とびっくりするくらいの金額の入った銀行ギルドの照明本が出てきた。

 そのお金を使えばスラムから出られる。

 だけど、今のボスに恩義を感じてる部分もあるし、何より、あの姉がどうやってあの金額を稼いだのかが気になった。

 もちろん、なんで地下で鼠のえさにされていたのかも。

 ほとんど寝たきりだった姉だけど…きっと、誰かに殺されたんだと思う。

 僕はそいつを探して復讐したい。


「さっきのは、その…君が姉と似てたから。だから、ごめん。」


「( ,,`・ω・´)ンンン?」


「あはは、えっと…」


 告白を終えた青年は苦笑しながら頬をかく。

 マッドは手招きをして青年に膝立ちさせる。


「( ,,`・ω・´)ン」


「ッ…」


 優しく抱擁するマッド。

 小さな手は青年の後頭部を優しく撫でている。


「…」


「僕は…」


 青年はされるがままだ。

 だが、少し時間が経てば


「ゥ、グス。ぼ、ぼくは、お、おねえちゃんと、いっしょに、いたかったよぅ…」


 奥に押し込んでいた激情があふれてくる。

 小さいころに失っていた涙という形で。

 コメント欄も空気を読んで黙祷と連打されている。


「大丈夫、今は、私の胸で、泣いて、良いから。」


 優しく微笑むマッドは、途切れ途切れながらも母性を溢れさせた。


「ウ…」


 涙が後悔を流していく。


 自分を失った姉と、家族を失った弟はしばらくそのままだった。




あとがき


 よし、何とかフラグ(地下に鼠が出る)を建てられた…

 どうしようか悩んだけど、これが最善のはず…!

 あ、


 黙禱


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