マッド・ディカルド始動!!!!
『マッド・ディカルドの初配信』
「ん~んんん~( ,,`・ω・´)ンンン?」
鼻歌を歌いながら何もない部屋の中央に座るマッド。
ぽこんと開かれたのはさくがマッドの部屋に入るための入室許可を取るためのウィンドウだ。
ん~と、首を傾げるとん!と、振り上げた右手を叩くように落として、承諾をタップする。
承諾しました!と変化すると数秒でウィンドウが溶け、代わりにさくがテレポートしてくる。
「マッドちゃぁぁぁあん!カッコかぁいい!うわぁぁぁあ!」
「あ、ああ、ありがと!さくちゃ、ん!」
「ふふん!どういたしまして!ねえねえ、私は?どう?」
「かあ、あ、あいいと、おも、おもうよ!えへへ、えへへへ。」
「ありがどぉ!優しいねぇ、可愛いねぇ…」
ハイテンションさくはそのまま座っているマッドに抱きつくと頭を削るように撫で回す。
端から見れば姉妹もしくは
その光景を見ていたスタッフ数名が前かがみになったのは言うまでもない。
「…はふぅ、よし、じゃあ、初配信前の要所説明するよ!私が話すから、マッドちゃんは座って遊んでてね!いじょうぅ!」
「あい!」
前かがみになっていないスタッフはズコッとコケ、前かがみのスタッフは前に倒れた。
コーヒーを運んでいた女性スタッフが倒れたため、数人がコーヒーをかぶることになったが、まあ、運がなかったんだね。
^^^^^
時間は飛んで配信数分前。
配信画面は真っ黒のブラックアウトの中央に「少々お待ちヲ…」と書かれ、三点が二秒に一度、1個、2個、3個、また1個と変化している。
よくゲームであるあれね?
マッド・ディカルドのチャンネルで配信されているそれを見ているのは現在120人ぽっち。
これの理由は、シャベッターの同時視聴モードを使用して見る人数を抑えてやめさせようと画策したとあるVと百合に挟まる奴アンチの動画投稿者が珍しく配信をして画策内容を拡散させたためにこうなった。
うん、幼稚。
ものの数分程度はすぐに過ぎ、デビューMVが始まる。
「少々お待ちヲ」が「はジまりまス」に変化し、ブラックアウトして消える。
その後、数秒が経ち、数十秒が経ち、数分が経ち、やがて、5分経った頃。
唐突に画面が2Dのさくを写す。
画面上部に謝罪と書かれた画面では、ほぼ3Dのさくが頭頂部を見せるように90°の最敬礼をしていた。
「いつも配信を見てくれている皆様、この度私、
申し訳なさそうな表情・声色・雰囲気の配信に、シャベッターでリスナーの騒ぎが大きくなったちょうどその時。
ピタリとさくの動きと声だけが止まり、音声だけ流れる静止画が数秒だけ流れる。
ん?と全リスナーが思ったその時、止まっていた画面が数十年前の夜中のテレビの砂嵐のように荒れ、マッドの笑い声が響く。
ザザザ、と砂嵐の音が強くなり、それがピタリと止まる。
グレー一色の画面の右横奥から、小さな少女が…いや、幼女が現れる。
オドオドする幼女の前には多くの難所が置かれている、が、少女は見えていないのか、難所に何度も当たり、何とかぎりぎりでよけている。
鰐の住む川を抜け、追いかける恐竜から逃れ。
難所を通り抜けるごとに幼女から少女、女性へと少しずつ成長していく。
やがて大人になってスーツを着た女性は会社と思わしきビルに向かう。
女性のこの物語も終わりなのか、会社と女性を隔てるのは一本の道路だけで、会社の後ろは道と同じ灰色になっていた。
信号が青になり、女性が渡った時、奥から走ってきていた車が止まらずに女性に衝突し、ブラックアウト。
ドン、キイイイイ!キャアアァァ!と、自動車と人間がぶつかったときを想像させられるSEが流れ、ピーポーピーポーと、救急車を思わせるSEの後、病院の一室に画面が移動する。
ベッドの上にはおそらく物語の主役の女性。
ベッド脇にはさくによく似た衣服を着た女性がさめざめと泣いていた。
むくりと起き上がる女性に抱き着くさく似の女性。
画面がブラックアウトし、次のシーンが映されると、それはベッドに座る主役の女性の鼻下から胸元までを写すアングルだった。
さく似の女性の頭が見えるその画面に映る口は横一文から、三日月型ににやりと歪んだ。
「お、おおお、終わったも、物語、りり、り。」
どもっている、チックを患ったような語り。
恐らくマッドの物だと容易にリスナーは想像できる。
「終わった、ら、ららら、それだ、だけ?け?」
画面が引き、一瞬ブラックアウトしたところで主役の女性がマッドの衣装に着替える。
目元以外の顔全体を隠す限界まで口を横に伸ばした顔が描かれたフルフェイスマスクに、染めたのか、金髪の髪の毛、白い、頭部以外の全身を包むタイツを来た上にこれもまた白い燕尾服を着こんでいる。
足がなくなったせいか170センチほどだと予測された身長から減り、120センチほどになった身長に似つかわしくないその服装だが、纏う
腰のベルトに着いた銀のチェーンには
少女は嗤う。
狂気そのものを体現するかのように、愉しそうに楽しそうに嗤う。
「さあ、も、もも、物語をはは、始めよう!えへへ、えへ、えへへへへへへへへッ!」
バタン!と洋風の扉が画面を閉じ、中央をガリっと大狼の爪痕が刻まれる。
狂った笑いが消えた後、横から殴りつけられるように現れた上下の帯に「今、準備ちゅうぅぅぅ」と書かれ、小さな「う」が配信待機画面の三点のように変化している。
数秒で上下の帯が現れた方向に消え、ギギギ…と扉が開き、画面が中に入るように移動した後、一瞬のフルブラックからパッと画面が切り替わる。
映されたのはマッドの部屋。
画面の正面には座ったさく。
と、さくの左後ろ側にちょこんとマッドが座っていた。
^^^^^
「わーい!リスナーのみんなこんばんわ!咲桜games所属の山桜 さくと、と…?あれ?」
「~♪」
「あははは…マッド・ディカルドこと私のママでーす!」
:!?さくちゃん!?
:担当V誰だって思ってたけどまさかの!?
:私のさくちゃんから離れて!
「えっと、ママ?」
「ん?な、なな、なに?に?」
女の子座りで地面をぺしぺし叩いて何かをしていたマッドが振り向く。
金髪が流れ、可愛い童顔とぱっちりおめめが画面に映る。
現実でも
が、さすがというべきか、すぐにコメント欄は再起動し、爆速でコメントが流れ出す。
:女の子!?
:男じゃないの!?
:金髪ロリ!?
:可愛くね!?
シャベッターの画面共有からリスナーが配信に移ってきたことも加わり、コメント欄は熟練のスタッフですら読むことができないくらいの速度が出ている。
※当作品での設定では世界中どこでも5Gは当たり前、場所によってはタイムラグ完全0が完備されている場所もあります。(異世界からの帰還者による技術)
ざわつくコメントをさくは完全無視して、マッドの目の前に座るとピッタリ体がくっつくように抱きしめ、マッドの頬を頬ずりする。
「にへへへ、可愛いのう、可愛いのう」
「( ,,`・ω・´)ンンン?」
画面の前の男子諸君が前かがみになったのは言うまでもない( ゚゚)( 。。)ウム
されるがままのマッドは先ほどまでなかったカメラに気が付き、ジッとカメラを見つめる。
「さくちゃ、ん、ん、あれ、な、なに?に?」
「ん~?」
ふいッとさくが振り向く先にはもちろん、カメラ。
サラっと配信のことを忘れていたさくはちょっと顔を赤くしながらマッドから離れ、おほんと仕切り治す。
「さ、さて、今回のママの初配信だけど、実は5期生達とは違ってカスタムでとある企画をすることになってます。だから5時間スペシャルなんだけどね。あ、忘れてた、地上波で見てるお茶の間のみんな!楽しんでね!」
:!?もしかして咲桜gamesチャンネルがシャベッター言ってたあれ、マジなの!?
:テレビとpcで2窓してる俺
:テレビ…契約しとくんだったって後悔してる俺
:急展開www
「じゃあ、ママ、カスタムに移動しよっか。」
「うう?」
パーティーを組んだマッドとさく、さくのテレポートでマッドが一緒にテレポートする。
120ほどだったさくの視聴者も今では十数万人が見ていた。
^^^^^
咲桜games公式チャンネルでの配信では同時接続数30万人を達成し、シャベッターの記事にも乗った。
咲桜games所属V大半のが配信しているため、数窓している人もいるだろう。
恐らく、それぞれ同時接続数十数万から数万程だろうか。
その中でも、最後にテレポートして来た新規でありながら最古参のママ、マッドの配信では同時接続数がどんどん伸び、21万人を超えた。
チャンネル登録も1万飛んで5万、10万と増え続け、15万程で上昇が緩やかになっている。
緩やかになっているといっても、上昇し続けている。
「よし!みんな!お待たせ~!」
「さくさん!と、マッド様っすね。」
「さっくちゃ!こんばー」
「「こんばんは、さくさん」」
「山桜様、こんばんは。」
「かわい…あ、さくさんこんばんは、その子がマッドさん?」
「こんばんは」
近くにいた人からどんどんあいさつされ、囲われないながらも、かなりの人数がさくの周りによる。
ぬいぐるみポジで抱きかかえられているマッドも知らない人がどんどん近寄るので目を回すほど首をブンブンさせながら挨拶する人を見る。
どっかのおもちゃで首を左右に振るあれみたいな感じ。
そんな挨拶も終わった後、さくは屋台の並ぶ通りを抜け、高く作られたステージに上がる。
置かれたマイクの前に立つと、マッドを横に下ろし、ポッケから取り出した紙を広げる。
「えー、咲桜gamesに所属している演者並びに多くのスタッフの皆様、本日はこのような大規模なイベントの準備と参加に感謝を述べさせてください!ありがとおおお!」
「「「わあああああ!」」」
「この度!私、山桜 さくは今までの有給休暇を使用するため、1ヶ月ほど、長期休暇を取ることを前々から発表していた通り、取らせていただきます!」
「「「わあああああ!」」」
「その代わり!マッドちゃん、もうちょっと前に出て立てる?」
「う?」
テコテコとステージから落ちそうなほど前に出て、ステージを見上げる人を一人一人観察するマッド。
若干名がステージ下に待機するのはしょうがない。
「この方、私の初期Vを生んでくれたママの、マッド・ディカルドさんをVとして、デビューさせるというか、してもらうというか…あーまあ、デビューします!」
「「「わあああああ!」」」
「そして、今回のイベントは、そんなマッドさんとみんなの顔合わせ兼、今まで交流できていなかったV同士の交流を図るため、こんな感じでお祭りイベントを開催します!では、全員解散!自由行動!」
「「「わああああああああああ!」」」
^^^^^
ステージからぬいぐるみポジでマッドを抱きかかえたさくが下り、ガヤつくVから一旦離れ、しっかりできていなかったマッドの自己紹介をする。
「さあさあ、マッドママ、自己紹介しませう!」
「( ,,`・ω・´)ンンン?」←これ気に入った
インベントリからマッドのプロフィールを取り出したさくは空中停止させてカメラに見せる。
^^^^^
名前 マッド・ディカルド
年齢 23
性別 無性
好きなもの 無記入
きらいなもの 無記入
自己紹介 無記入
^^^^^
「事前にウェブサイトに投稿されてたママのプロフィール見た?ママね、面接を受ける直前に事故にあって、そのせいでちょっと、壊れちゃったの。」
「( ,,`・ω・´)ンンン♪」
何とも言えない雰囲気の流れる中、空気を読まずに金髪を揺らしながらゆらゆら踊る本人にリスナーはネタなのか本当なのか察せず、考察部屋がシャベッターに作られたが、それはまた別の話。
「さ、やめやめ、こんな雰囲気はここだけにして、みんなに挨拶しに行こう!」
「さくちゃん、つ、つつつ、つ、つ、ついてく?」
「うん、一緒に行こかね。」
「うん!え、へ、えへへへ、」
姉妹のように手をつないで数人のVが集まる場所に向かう二人。
リスナーは配信前のマッドアンチはどこかへほっぽり、なぜかあるりんご飴や焼きそば、たこ焼きに反応するマッドに多くの好感をコメントした。
人間の闇。
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