とある異世界の話
『世界は“力”が支配する』
本編とはちょっと関係のないジブルーンのどこかのお話。
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僕が持つ最初の記憶は母親と思われる女性が何かを叫びながら僕の家族と家族を増やしている光景だった。
僕等にとってそれは当たり前だったし、力の弱い者が力の強い者に奪われるのは当たり前だった。
それでも、命まで奪うのは村の中ではタブーだったから、それをする仲間はいなかった。
ゆっくりと育つ僕と違い、同い年の女の子は数週間で大人と同じ大きさになって子供を産んでいた。
ゆっくり育った僕は生れて3ヶ月でやっと弓を引けるようになり、大人と一緒に狩りに出た。
僕の同行する狩りでは、なぜか豊狩となるため、僕は狩りをするときは積極的に連れて行かれた。
ほぼ毎日山、森を歩き、木に登り、弓をつがえることで、僕は村でもずいぶん強くなった。
生まれてから季節が4回ほど巡った後は、大人よりも強くなった。
どれくらいかっていうと、角獣と呼ばれる僕が3人分くらいの大きさの獲物を持ち上げられるくらい。
それと、僕に兄弟姉妹が18人出来た。
お母さんは夜、僕を抱きしめて寝るけど、いっつも「ゴメンネ、ゴメンネ」って言ってる。
「ゴメンネ」ってなんだろ?
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いつもみたいに狩りを終えて村に帰る。
村では僕が一番強いけど、僕よりももっと生きてる長老がいるから、僕が村長ってわけじゃない。
狩人のみんなは僕を村長にしたがるけど、僕が嫌だっていうと何にも言わなくなる。
…あれ?なんか様子がおかしい?
「何が起こってるんだ!?」
「悲鳴がするぞ!」
「…」
素早く動いて獲物のけんを切る役の狩人が落ち着きなく足を速くする。
獲物を見つける役の身軽な狩人が仲間の悲鳴を聞いて武器を取り出す。
僕も武器を取り出していつでも戦えるように―――
ボゴ!
「うぐう!?」
な、にが?
「潮時だ。お前ら、遅咲きを拘束しろ。」
「「ど、どう言うことだ?」」
「早くしろ!」
「「お、おう!」」
ふたりに、しばられる。
かつがれて、ちかくのいえになげこまれる。
な、んで?
「遅咲き…。」
なんで、なきそうなかおするの?
「幸せにな。生きろよ。」
どこに、いくの?
まって、まってよ!
「あ、え!あ…え!」
「…行くぞ。」
その後、しばらく仲間たちの悲鳴がした後、村の仲間じゃない奴らが家に入ってきて、僕の縄を解いた。
知らない言葉を使う彼らは誰だろう?
抱きかかえられて家を出ると、薄かった悪臭がより強烈になる。
なに?動物を解体したときよりも酷い匂い。
いつも子供たちが走り回っている広場に行くと、力が抜けた仲間が折り重なるように寝てた。
仲間が山になっているそこから、最もひどい悪臭がして、そして、時々しか見ない仲間の血の色が見えて。
僕は吐いた。
なぜ、なぜ?なぜ…
死。
狩りの時、ミスをして獲物に殺された仲間を見たことがある。
獲物の角が目に刺さって突進した衝撃でなのか、体が引きさけ、血の塊がちぎれた体からだらんと垂れ下がっていた。
仲間は怒り狂い、過食部位だとか、何も考えずに獲物をぐちゃぐちゃに殺した。
そう、この世界は力が支配する。
僕を抱いていた硬い奴がお母さんに僕を渡す。
「ヨカッタ、ワタシタチタスカッタノネ」
いつもより強く抱き着いてくるお母さんは涙を流してた。
家族が死んだ。
だからだろうなって。
そう、
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あの時はそう思ってたんだ。
家族が殺されてから早7年。
俺は11歳になった。
人間に保護されていろいろ学んだ俺はあの時の状況を再び考えてみる。
俺が狩りに言ってる間に人間がゴブリンの村を襲撃。
戦果をあげる中、人間の女性を保護。
証言から俺の存在を知り、あらかた討伐した後、家を燃やす、という作戦を取り消し、俺の保護を優先する作戦に。
半分ほど殲滅した後、反撃する個体(僕の狩人隊の3人)を補足、軽重症を負いながらなんとか討伐。
その後、縛られている俺を発見し、保護した後、ゴブリンの死体を燃やし、家を燃やした。
と。
これは人間側の意見。
俺からの意見で言えば、平和に暮らしていた村を攻撃し、非戦闘員も関係なく皆殺し。
家を焼き討ち、仲間の死体を侮辱した。
許されざる行為、許されざる罪、裁かれるべき奴らは、都市に帰ると母さんと俺を救った英雄として祝われた。
どうやら母さんは新婚の貴族で、爵位もかなり高い。
ジブルーンというこの惑星で最も大きな城塞都市のかなり高い爵位の令嬢兼奥様。
盛大に祝われた「冒険者」達は母さんとの繋がりも持って、最高クラスの冒険者になったらしい。
まあ、どうでもいいけど。
でも、それじゃあ救われない。
仲間の、家族の、死と屈辱が。
母さんは僕の兄弟姉妹を忘れるべきものとしてるけど、僕は覚えている。
絶対に忘れない。
彼らの、彼女らの恨みを晴らすために、僕は「俺」という仮面をかぶり、冒険者になる。
この世界は力が支配する。
なら、誰にも負けない社会的、物理的、金銭的な力を持とう。
敵を討つために。
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