28 休憩ですが?

 篠崎さんにもらった洋服とwiselyで購入した霰さんの下着をコインロッカーにいれ、スマホを確認しながら篠崎さんと合流を目指していた。


 青鵐にないものを頻繁に買い物に来るため通いなれている巨大なショッピングモールなのだが、佐一は必要最低減のお店にしか行かないため道に迷っていた。


 しかも合流するため篠崎さんから送られてきたラインはと言うと。


『楽しい場所にいるよ\(≧▽≦ワッ)/(スタンプ)』


 場所の名前すら書いてくれない。


 ため息をつきながらも可能性のありそうなお店を一件一件覗いてみる。


 少し時間がかかったが、あるお店の前で見知った顔を見つけることが出来た。


 ベンチに深く座り、自分より遥かに疲れ切った表情の次女鈴さんが。


 多分あのゲームセンターに篠崎さんがいるのは確実だが……そのまま合流するのはちょっと気が引けるな。


 佐一は身近にある自販機でカフェオレとレモンティーを購入して。鈴さんの目の前にカフェオレを差し出した。


「疲れ切ってますね」


「……あんたのせいでね」


 佐一が視界に入ると怒りをあらわにしながらカフェオレを奪い取る。


 ゆっくりと飲み始める鈴さんだがよっぽど疲れ、のどが渇いていたのか、一口で四分の一ほど飲み干した鈴さんは少し落ち着きを取り戻す。


「今日はただ乃虎ちゃんと雑誌にのっていたお店に行くだけだったはずなのに。篠崎くんとお前にあってから乃虎ちゃんは篠崎くんにべったりで移動しっぱなし……何でこんなことになってるんだろ」


 途方に暮れた様子の鈴さん、小さな愚痴が次々と口からあふれ出す。


「それは疲れますね」


 そんな鈴さんに向かってベンチの後ろに立ってレモンティーを飲んでいる佐一は他人事のような返答をした。


「……あんたねぇ」


 飲みかけのペットボトルを握り潰すほど怒りをあらわにする鈴さんに対し。


「第一青鵐に住む学生が休みの日に軽く遊びに行こうと思うとこの大型ショッピングモールしかないので偶然出会うのは仕方ないことなのでは」


「本当に偶然なの」


「……多分?」


「なんで疑問形なのかなぁ」


 ペットボトルをゆらゆらと揺らしながらとぼける佐一に大きなため息をついた鈴は立ち上がると。


「今日は偶然ってことで何も言わないけど、明日からは私たちに近づかないで。これ以上あんたが私に付きまとい関係を崩そうとしているのなら、あんたを潰す」


 自分を睨みつけながらそう言い残しゲームセンターの中へ入っていった。


 相変わらず悪になり切れてないな、潰す気なんてないだろうし、全く持って言葉に迫力が無い。


 しかし鈴さん、自分が何か企んでいるとはうすうす気づき始めているが、見当違いな方向に思考を向けているな。自分の性格を知っていれば関係を崩すなんてことはしないと思うはずなのに。


『ああ、分かったぞ、何故親や警察ではなくお前がここに来た理由を。お前は家族ではなく一つの道具として見られ、使われている。利用されているんだよ‼』


 過去の記憶、血まみれで倒れる本物の悪、他人の言葉が脳裏に焼き付く。


 ああ、何くだらないことを思い出しているんだ。どうでもいいじゃないか、昔の事なんて。


 空になったレモンティーのペットボトルをゴミ箱まで持って行き、鈴さんを追いかけるようにゲームセンターの中に入ってゆく。


 その時の様子は強く唇を噛みしめ、出血していることを自分自身でも気づかないほど考え込んでいた。

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