11 情報屋ですが?
どうも皆さん初めまして。おでこについているカチューシャが目印、時乃三谷学園高等部二年B組七海 明野です。趣味は写真と人間観察であります。
今現在、高等部B組は体育の時間ですが私はお腹を壊しトイレに行くと先生に嘘を付き、グラウンドの周りに生えている木の上で一眼レフカメラを構えている次第であります。
何故こんなことをしているのかって? 答えは簡単、女子の体操着の写真は高く売れるからです。
家からもらえるお小遣いは少ないし、バイトはめんどくさいから、学校中の人たちに写真や情報を売って好きなものを買っている次第であります。
そして今日も今日とてトイレに行くという少しの時間を使い女子をカメラで覗いている次第であります。
「むっふっふぅ。ええのぅ~これは高く売れそうだ」
走る姿は写真じゃなく動画にしたらもっと高く売れるかも。
体操をしている女子生徒をカメラでとらえ、絶え間なくシャッター押していると。
「何しているんですか?」
「ちょいまち……今大事なところだから……」
声がした方に顔をやると、自分の上っている木の根元に中等部の男子生徒がこちらを見上げていた。
何で今の時間に中等部の生徒が……こんな女子生徒を盗撮していることがばれるとまずい。
逃げ場を探そうとするがここは木の上、急に話しかけられたことに焦りがでて、自分が木の上にいることを一瞬忘れてしまい足を滑らせる。
「あ」
と言葉を放ったときには空中で背中から真っ逆さまに枝が折れる音を立てながら落ちてそのまま地面に叩きつけられた。
「あ……いったぁ」
背中をさすりながら立ち上がり、ぼ~っと立ち尽くす中等部の男子生徒の前に立つ。
「君、男らしく受け止めるとか考えなかったの?」
「無理言わないでください、自分より体格のいい女性を受け止めたら腕折れますって」
ムカッ、女性に対して何なのこいつ可愛くない。
「無事だったならいいじゃないですか。そんな事よりこんなものをもって木の上で何してたんですか?」
「ちょっと、勝手にいじらないで」
私のそばにあったであろうカメラを持ち上げようとする男子生徒にとびかかり止めようとするがあっさりかわされカメラを取られる。
「このカメラに映っている写真は何ですが」
先ほどまで撮っていた女子生徒の写真をこちらに向けて見せてくる。
「……え、し、知らないな。あ、そのカメラ新聞部から借りてきたやつだ。一体だれがそんな写真を……」
「この写真、葉や小枝が周りに映りこんでまるで隠れて撮ってますね。」
ギクッ
「それに上から見下ろすように撮られてませんか? どう見てもこの場所から今取られたようにしか見えないのですが」
こいつ、分かっててカメラ奪い取ったな。仕方がない。
「はぁ~バレちゃぁしょうがないな。そうさ‼私が盗撮していた犯人七海 明野だ‼」
「いや胸張られてそんな事宣言されても困ります……しかし、こんなところで会うとは」
「君、名前は?」
「……深ノ宮 佐一ですけど」
ふん簡単に名前を言ったな。
私の趣味は写真の他に人間観察、つまり情報屋をやっているのであります。
制服の内ポケットから素早くタブレットを取り出しこの学校全ての生徒のことをメモしてあるメモ帳アプリをひらく。
さ~て商売の邪魔してくれたんだ、深ノ宮 佐一君。
「ふむ、君には四人の姉がいるね」
「いますね」
「君は家庭的で毎朝皆にお弁当を作っているが、同じ二年次女の鈴と一年三女楓は自分が作っていると周りに嘘を付いている……ん?この話最近誰かに話したような」
「そうだったんですか」
「まあいいか。でぇ、最近は四人の姉に近づき何かを企んでいる……そんな、シスコン野郎だ‼」
「否定はしませんね」
あれ? あんまし効いてない。
えぇ……他に動揺させられそうなネタは……
ペラペラと指でスワイプして探すのだが、これだ‼という情報は彼には全くない。
彼のお姉さん達は特徴があって売れそうだからネタ集めしてたけど……全校生徒くまなくチェックしているはずなのに彼の素性は成績普通より下、運動神経は人並み、生年月日ぐらいしかメモされてない。
影が薄いのか、人から興味を持たれない人間なのか。
少しイジメてやろうと思った七海だが情報が記載されていないため、あきらめてタブレットを懐に戻すとき「あの」と今度は深ノ宮の方から声をかけてきた。
「そんな事より自分は貴方に話があります。七海さん」
「私は君に用事はないよ。さっさとカメラ返して授業に戻りな」
早く写真撮らないと貴重なシャッターチャンス逃しちゃうし。
「写真を売ることと情報を売ることをやめてください」
「……なんだ、私が稼いでること知っていたんだ。嫌だ、せっかくの稼ぎ口をやめるわけにはいかない」
「お金を稼ぐ理由は?」
「ただ遊ぶ金欲しさ。それが何」
「ならなおさら止めないと。バラまきますよ」
「先生? 別にいいよ。この学校の大人にも売ってたことあるし喋られて困る物ではないかな」
「貴方の情報」
「……はぁ?」
「七瀬 明野、二年B組、八月七日生まれのしし座、好きな食べ物はキャラメル。スリーサイズは上から八十ろ……」
「まてまてまてっ……どうしてスリーサイズまで」
赤面しながら深ノ宮の口をふさぐが簡単に振りほどかれる。
「あなたがやっていることはこういう個人情報をバラまいていることです」
「……むぅ」
こいつ私の情報で脅しやがって。
「まあ、貴方自身のことを周りに喋られたくなければやめることですね」
そう言って立ち去ろうとする彼を呼び止め。
「私のスリーサイズ何処で知ったの?」
「秘密です」
華麗に流され、こちらを振り返りもせずそのまま去っていった。
深ノ宮 佐一……私に情報で挑むなんて面白いじゃん。
よし、今決めた。絶対あいつの恥ずかしい秘密をゲットして先輩の恐ろしさを教えてやります。
「ふふっ……はっはっは。って、カメラ返してよ‼」
涙目で叫ぶが、その声は誰にも届かないのであった。
そんな数分の出来事、その後カメラは画像、録画データを消された状態で職員室に預けられていた。
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