第28話 ミスティア、ヴィルフィールと踊る
ミスティアは扉をくぐり抜けた瞬間、眩しすぎて目が眩むかと思った。
だが、流石に目を隠したりするのは良くないかと判断し、しっかりと歩く。
二人が向かっているのは国王の座る玉座だ。
ざわざわと、貴族が話す声が聞こえる。
きっと、あの二人は何者なのだろうとかそういうことを話しているに違いない。
ただ、ミスティアからすればただの雑音なので放っておく。
そうして、堂々とした態度で国王の前へ行く。
「スロウス閣下、グリード閣下、ご健勝で何よりだ」
「陛下。私たちの言葉を取らないでください」
「いいや、この場では私よりお二方のほうが上の立場だからな」
「そうですねぇ。間違っていません」
そのままミスティアたちは国王と王妃と談笑をはじめた。
その様子を見て、宰相や周りの貴族はポカンとした顔になった。
国王より立場が上の二人とはいったい誰なのだろうか。
「改めて皆に紹介しよう。彼らは隣国から来日なさった7賢者のお二人だ。彼女はミスティア・スロウス女公爵閣下。そして、彼はヴィルフィール・グリード公爵閣下だ。失礼のないように」
その紹介を聞き、やっぱり貴族どもは驚いたりしてる。
ミスティアはその様子を全く気にせず、じっとあたりを見ている。
「さあ、今宵は無礼講だ。7賢者のお二人からの提案でな、今宵はいつもより楽しい夜会にしよう。では、始めよう!」
そうして、国王の少しおかしな宣言の後、夜会は始まった。
ミスティアとヴィルフィールは早速逃げる。
令嬢や子息たちに囲まれそうになれば、そりゃあ逃げるだろう。二人とも貴族が苦手なのだから。
「何とか逃げ切ったっ……」
「ああ、これだけで気疲れしましたよ全く!!あいつら、どうして私たちに寄って来るんです!?」
「ヴィルがそこまで怒るのも珍しいね。いつも笑って受け流してたのに」
「すみません。うるさかったですか?」
「ううん。大丈夫」
ミスティアの言っていることは本当だ。ヴィルフィールはほとんど怒らない。
怒らないというより、怒っているところを見たことがないというか。
がむしゃらに逃げていたが、ここは王城の中庭のようだ。
昼にも見せてもらったが、夜の中庭だからか雰囲気が変わって見える。
「ヴィル、中庭ってこんなに幻想的だった?」
「いえ。夜効果だと思いますよ」
「そうよねー。……というか、ここまで音楽聞こえてくるってすごいわね」
「確かに、聞こえますね。……どれだけ大音量で演奏しているんでしょうか…」
ミスティアはふと思った。
ここまで音楽が聞こえて来るのなら、ヴィルフィールと踊れるのではないか。
一度ヴィルフィールと踊らなければ流石に怒られそうだ。
そう思い、ヴィルフィールに声をかけようとした。が、
「ミスティア、私と踊っていただけませんか?」
「ふぇ?」
「嫌ならいいのですが……」
「え、いやってわけではない…けど」
まさかヴィルフィールから誘われるとは思わなかった。
なぜかヴィルフィールの耳が少し赤くなっている気がするが、まあ気のせいだろう。
そんなことを思っていると、ヴィルフィールがミスティアの前に跪く。
そしてミスティアに手を差し出した。
「改めて……ミスティア・スロウス女公爵閣下、
「……はい」
そうして、ミスティアは差し出された手を取り、二人は踊り始めた。
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