第25話 怠惰な生活には程遠い
そして、ミスティアは国王の私室へと訪れていた。
流石一国の王といったところだろうか。私室はやはり豪華だった。
ミスティアにはそれが目に痛く、少し機嫌が悪くなっているが。
「で?私を呼び出して何の用だっていうの?」
「そう警戒するな。私は怠惰の魔女に用があるのだから」
「はあ、なんで私は怠惰の魔女って呼ばれてるのか。国では怠惰の賢者だったのに」
ミスティアが一番気に入らないところは怠惰の魔女と呼ばれているところである。
魔女とは遥か昔に生きていた種族で、賢者であるミスティアとは全く違う別の生き物である。
魔女と賢者の違いはいくつかあるが、主な違いは魔法の種類というところだろうか。
魔女は種族固有の魔法があるが、賢者は魔女の使う魔法以外のものであればなんでも使える。しかも、新たな魔法も作り出すことができる。
例えば、薬の魔女という種族であれば薬などを作ったりすることが得意で、毒薬や新種の薬など、いろいろなものが作れたりする。
他にも、雷の魔女は雷系統の魔法が使える。
一番危険とされた魔女は絶望の魔女だが、今は滅びているはずだ。生き残りがいない限りは、だが。
ちなみに、怠惰の魔女もいたらしいが、現在は滅びたかも生き残っているかも解明されていない。
「話がちょっと逸れちゃったわね。それで?私を呼び出した理由はなんなの?下んない理由だったらはっ倒すどころかこの世から
「第二王子はダメだろうか。第一王子は想い人がいたが、第二王子ならば今は誰もいな……」
「ふざけてんの?」
ミスティアは思った以上に自分から低い声が出てきたことに驚いた。
だが、それと同時に国王に対して怒っていた。
「私たち賢者はつがいとしか愛し合えないって言ったでしょ。その王子を見たことはないけど、私はつがいがこの国にいればわかるし、つがい以外はどうでもいいのよ。そんな私がまた王子の嫁?冗談じゃないわ。そんなのになったら自由じゃなくなる。私はそれを望んでいない」
ミスティアは国王にキッパリとそう言った。
ここまでキッパリと自分の意思を国王に伝えるものは今まで一度もいなかっただろう。だが、ミスティアはたかだか国の王に跪く意味がわからなかった。
それは当たり前だろう。ミスティアは怠惰の賢者であり、立場は国王よりも上なのだ。しかも、7賢者は一人で国一つ滅ぼすなど簡単なことだ。
そこは履き違えてはならない。
「私は7賢者だ。国王よりも上の立場の存在だ。お前に指図されて気分がいいわけがない。私の機嫌を損ねるほうが、この国にとっては損害じゃないか?私の機嫌を損ねるだけで、他の7賢者にも手を貸してもらえなくなるのだから」
それは、ミスティアの意見だった。だが、事実でもある。
実際、ミスティアの機嫌を損ねると他の7賢者に手を貸してもらえなくなるし、最悪の場合国が焦土となる。
国王も、そんなことにはなってほしくないだろう。
「……すまなかった」
「まあ、私は今はヴィルと旅ができたらいいからさ!」
「怠惰の賢者殿、その、ヴィルと言うのは…?」
「ああ、 強欲の賢者ヴィルフィール・グリード。不動の序列一位であり、その力は測りきれない……彼は、普通の賢者よりも遥かに強いの。彼の力は上限が無い。つまり、彼は永遠に成長し続ける。………本当に恐ろしい。…………って、関係ないか!でも、ヴィルは一人で世界を滅ぼせるんじゃ無いかなー?とは思ってるよ」
その言葉で、国王はこれ以上の深堀はやめたほうがいいと判断したようで、ミスティアにはもう何も聞いてこなかった。
「ヴィル、終わったよ」
「遅いですよミスティア。あと5分でも遅かったら扉を蹴破ってでも入っていましたが……」
「扉は蹴破るものじゃ無いと思うけど!?」
「扉は壊すものでしょう?」
「ちょっと何言ってるか分からないかな」
やっぱりミスティアは、ヴィルフィールと冒険していたほうが今は楽しいと思った。それは、紛れもない事実なのだ。
(次はどの国に行こうかな…)
ミスティアは、ヴィルフィールと城の廊下を歩きながら、そう考えていた。
怠惰な生活には、まだ程遠い。
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