第22話 ミスティア、婚約解消を望む

ミスティアたちは部屋を移動したのだが、その部屋は沈黙に包まれていた。

誰も言葉を発さないため、とても気まずくなっていた。


「ヴィル……。怠惰の魔女って私のこと?」

「いや、ミスティア以外に誰がいるんです?私はの賢者ですし」

「そうよね…。まさか、知らないうちにそんな不名誉な名前で呼ばれるとは思ってなかったわ……」


ミスティアはまだ混乱しているようで、もう一つのことに触れていない。いや、触れようとしていないというべきだろうか。


「それで……。父上、どうして怠惰の魔女と婚約しなければならないのですか?私には想いあった人がいるというのに!!」

「どうしてではない。7賢者のうち誰か一人でも婚約することができれば我が国の軍事力も上がるというもの。しかし、7賢者は怠惰の魔女以外、皆結婚しているというではないか」

「いや、それは他の7賢者たちが私の婚活の邪魔をしt…」

「ミスティア?それ以上は言ってはいけません」


ミスティアは、7賢者が原因で結婚できていなかったのだが、それを言おうとするとヴィルフィールに遮られた。抗議しようかと思ったが、ヴィルフィールの有無を言わさぬ顔に何も言えなくなった。

だが、ミスティアのいない間に勝手に婚約が決められているのは良くない。

7賢者はと呼ばれる者でなければ子を産むこともできず、でなければまず愛することすらできない。

そのため、7賢者は政略結婚の駒にはしてはいけないのだ。


「あのさ、私一応7賢者だよ?とでなければまずその人を愛することすらできないんだけど?」

「そうですよね。私とミスティア以外の7賢者はそれぞれ7賢者とつがっているか一般の方とつがっているかですからね…」

「そうよ。私もヴィルも、が見つからないのよ。そっちの方が大変だわ。早く見つけないと生まれ変わるのを待たなきゃいけないじゃない!!」


はすぐに見つかるわけでもないし、見つかったとしても歳を取りすぎている可能性だってある。

何度でも生まれ変わるのだが、ミスティアはそんなに長く時間を待つことはできない性質タチなため、見つけようと思った時に見つかればいいと思っている。


「国王陛下、婚約の話はなかったことにしましょうか。無理やりミスティアを婚約者としてこの国に止めようものならば……7賢者の総力を上げてこの国を滅すということをお忘れなく」


ミスティアはしっかりと国王を脅していたヴィルフィールを見て、『はあ』とため息をついた。

7賢者は皆物騒なようである。

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