第19話 ミスティア、王城に行く

ギルド長は、気さくな感じの優しいお姉さんといった感じの女性だ。

何回か討伐依頼をしているうちに仲良くなったのだ。

それで、今日はお茶会らしきものに招かれたのである。


「ミスティアちゃんは魔法が得意みたいだけど、やっぱりそれ以外はからっきしなのかしら?」

「いいや?剣も槍も弓もその他の武器とかも使えるよ。多分普通の剣士とかより強いと思う。普通に身体能力も高い方だしね」

「万能ねえ……」


そんな話をしたせいか、ミスティアはギルド長に武器の腕前を見せてほしいと頼まれた。

ギルドの訓練場へ行き、そこで披露することになったのだが…。


「ミスティア、すみませんが、席を外せませんか?」

「あれ?ヴィル。どうしてここに?」

「理由は後で話します。とにかく今は私についてきてください」


少し焦ったように見えるヴィルフィールに、ミスティアは訝しみながらもついていく。

いつもよりも早足でミスティアの腕を引っ張っていくヴィルフィールはいつもの余裕が消え失せている。

ミスティアは始めて見たヴィルフィールの表情に不安と少しの嬉しさを感じた。

なぜそう思ったのかわからないが、気にしないことにした。

そのまま二人は宿に戻ると、ヴィルフィールは突然こう切り出してきた。


「ミスティア、突然ですが王城に行きます」

「……は????」

「決定事項です。本当にすみません。国からでたミスティアに7賢者としての役目を果たさなくても良いよう国王にも伝えておいたのですが……。流石に隣国には伝わりませんか」


ヴィルフィールが言うには、明日7賢者として王城に行かなければならないらしい。

何それ面倒くさいと思ったミスティアは悪くないだろう。

ミスティアが7賢者だった頃、国王は第二の優しい父のようだった。

そして、よくしてもらったのだ。もちろん、王妃にも。

そのため、隣国の国王を見たときに世の中こんなにいい国王と妃である訳がないのだと悟ったのだ。

そんな二人に会いに行くためだけに王城に行かなければならないとははっきり言って面倒くさい。


その上、本当は7賢者の方が上の立場であるため、国王側が出向かなければならない。

だが、もう仕方がないだろう。


「分かったわ。明日ね?明日だけだからね?ヴィルの付き添いだからね?私は絶対に王城で何かしたりはしないから!!」

「分かっていますよ。……すみません、ミスティア。7賢者の仕事を放り投げてまで隣国に来たのに」


ヴィルフィールは、そう言って少し悲しげに目を伏せる。

そんな表情に、少し罪悪感がしてしまったミスティアだった。

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