第15話 ミスティア、ヴィルフィールに宝石を選んでもらう

しばらく歩いていくと、小洒落た店が多くなり、良い仕立ての服をきている人が多くなってきた。


「ヴィル、きっとこの辺は貴族街よね?ここで魔法込めるようの宝石買えるかしら?」

「買えると思いますよ。きっと質の良い宝石が売っているはずです」


ミスティアは、魔法などを込めるときは宝石を使う。

一般的には魔法を込めるという時点で非常識だが、7賢者は皆そうして魔法を込めていたためミスティアにはそれが当たり前だと判断してしまったのだ。


「ヴィルは宝石何がいいと思う?私的にはルビーとかの赤系なんだけど」

「私はサファイアのような青いものでしたら大体いけます。私の主な属性が氷、水属性ですから」

「私は炎とか火とかが得意属性だからなあ」


そんな話をしながらミスティアとヴィルフィールは歩いていると、ちょうど良さそうな宝石店が見つかったためそこで何か手頃なものを買うことにした。


「どれがいいと思う?私は趣味でやってるから、赤系の宝石に魔法を込めるのが得意とは言っても、あんまり拘らないし」

「ミスティアはその辺は拘らないタイプでしたね。魔法を込められるならなんでもいいというような感じがしましたし」

「本当にそれ。他のみんなは結構こだわってたよね」


ミスティアは魔法を込める宝石に特にこだわりはない。

強いて言えば多くの魔法を込められるものだろうか。だが、他の7賢者たちは色々とこだわっており、ヴィルフィールは青い宝石か黒に近い色の宝石しか使っていなかった。

そのため、ヴィルフィールに決めてもらおうと思ったのだ。


「値はいくら張ってもいいよ。まだお金余ってるし」

「そうですね…。なら、水色系統か紫系統でしょうか。ミスティアの目は見る方向からによって紫に見えたり水色に見えたり、青に見えたりするので」

「よし。じゃあ、その辺の色の宝石を片っ端から買うか。その方が楽だし」


そういうと、ヴィルフィールは呆れたような顔でミスティアを見る。

ミスティアはなぜ彼がそんな顔をしたかわからず、首を傾げる。

「ミスティア……、貴女、買い物はいいと思ったものを全部買ってしまうタイプでしょう。靴とか服とかのサイズなんて見ない大雑把」

「う、うるさいな!いいじゃないの!好きにさせて頂戴な!だって私はその辺はよくわからないんだもの」


買い物のことはミスティアはよくわからない。

そのため、大抵侍女に任せていたのだ。


「仕方ないですね。私が選びますよ。ミスティアはせっかく魔法を込めるのが上手いのに。石が合わなければうまく込められないでしょうに」

「今まではそんなこと関係なしに力でゴリ押ししてたからね」

「やっぱり根本が脳筋ですね……」


ヴィルフィールの言った言葉は無視して、ヴィルフィールの選んだ石をいくつか買い、店を後にした。

ヴィルフィールはミスティアと合う石を選んだため、今までよりもスムーズに魔法が込められそうだ。

少し楽しみである。


「もう夕方だし、宿でも探しましょうか」

「そうですね。食事がついているところがいいと思いますよ」

「じゃあ、そうしましょうか」


彼とたわいもない話をしている時が、今一番幸せだと思うミスティアだった。

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