第17話 ヴィルフィールは夜の散歩をする
ミスティアとヴィルフィールは依頼を受けた後、すぐにその魔物を倒しに行った。その魔物は虎に近い姿をしているが、肉の味が牛に近く、美味しいのだ。
二人とも食事が好きなため、良い食材があるとすれば必ず飛びつくのだ。
「この辺にいるんじゃない?」
「いると思いますよ……。あ、あそこです!」
二人は不意打ちで、虎の魔物を氷漬けにする。
二人はすぐに周りにいた魔物も蹴散らし、虎の魔物を亜空間に収納する。
そうして、何事もなかったのかのように冒険者ギルドへと帰っていくのだった。
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〜その日の夜(ヴィルフィール視点)〜
今夜は月がいつもよりいっそう輝いており、周りの星をも輝くことを許さぬとばかりに光っている。
ヴィルフィールは、夜中にこっそりと起きると、音を立てぬように窓から外へ出る。
屋根の上を走り、やがてある場所へ辿り着く。
それは、王城だった。
ミスティアには秘密にしていたが、ヴィルフィールはこの国の王からの直筆の手紙をもらってしまっていた。
内容は、こんな感じだった。
今、この国はとある危機に瀕しているそうだ。
その危機を、7賢者であるヴィルフィールに解決してもらいたいらしい。
できれば、ミスティアも連れてきてほしいと書いてあった。
はた迷惑な話だ。とヴィルフィールは思う。
なぜヴィルフィールはこのような依頼が来るのか。それは、ヴィルフィールが7賢者をまとめる位置にいて、なおかつ顔も知られているからだ。
ミスティアはほとんど公の場には出ていないため顔は知られていないが、ヴィルフィールの場合は違う。
そのため、このような面倒な依頼も来てしまうわけだ。
しかも、自分だけを呼び出すのならまだ何も思わなかった。だが、この国はミスティアも呼んでしまった。
おそらく、ミスティアはこの国の王子か何かにでもあてがわれようとしているのだろう。自分の国の国王はミスティアに結婚を強いたりはせず、第二の父親のように見守っていたが、流石に他の7賢者は違う。
他の7賢者は皆ミスティアを気に入っている。
そのため、ミスティアが自らの手元から離れていくのは耐えられないことだった。もちろん、ヴィルフィールも同じである。
最も、ヴィルフィールの場合は少し違う感情が混ざっているが……。
ともかく、ミスティアの合意なしに結婚でもさせられようものなら、その国は滅びの道を辿るだろう。
ヴィルフィールは、その忠告をしに来たのだ。
この忠告を守らなければ次はないというように。だが、ヴィルフィールのこの対応はまだ優しいものだ。
他の7賢者ならばすぐに国を滅ぼしかねない。
それはあまりにも危険なので、ヴィルフィールが直接忠告しに来たのだった。
「あまり遅くなってミスティアに不自然に思われたくないですしね。すぐに帰りましょうか」
そんな独り言を呟き、ヴィルフィールは王の私室へと向かったのだった。
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