第12話 ミスティアとヴィルフィールの逃避行
加護が使えなくなると言うことは、普通の人間であれば死を宣告されているのと同じだ。
ミスティアのような人間と言ってもいいのか分からない人間は関係ないが、他の人間からすれば致命傷である。
すなわち、彼は街では暮らすことができない。
「どうして!?街じゃないと不便じゃない!」
「すみません。これは生まれつきのもので……。ミスティアには特に効果がありまして」
「なんで私限定!?」
なぜかミスティアには効果が高いらしい。
ミスティアには、加護が使えなくなるだけでなく、病にかかりやすくなったりするそうだ。
理不尽すぎる。
「それは貴女が私の……ですから」
「え?なんて言ったの?」
「…いえ、なんでもないですよ」
本当になんて言ったのだろうか。
気になるが、とりあえずこの先のことを考えなければいけない。
森から出るには出られるが、ヴィルフィールのせいで街では暮らせない。
とすると、どこか違う森か何かにでも家を建てなければならない。
だが、問題はちょうどいい土地があるかどうかだ。
そこさえ解決すればなんとかなる。
「ヴィルフィール。……いや、ヴィル。とりあえず、この街から出るからそのことを伝えないと。冒険者登録もしないとだしね」
「…いいのですか?私は貴女に無理やりついてきたようなものですが……」
「今更そんなこと気にすんの?どうにしても、ヴィルと暮らすんだったら街じゃ無理でしょ。それに、7賢者が二人も国から逃げたなんて冗談じゃない。探される前にもっとあの国から遠くの場所に行かなきゃ」
だから、立ち止まっている暇ないでしょ。というと、彼は少しポカンとした顔をして、それからすぐに笑い出した。
「……ふふ、あははははっ!さすがミスティアですね。確かに、探されているでしょうしね。遠くに行くというのは正しいと思いますよ」
「でしょう?」
「そうですね。……では、遠くに逃げてしまいましょうか。ミスティ?」
「…そうね、ヴィル。逃げてしまいましょう。7賢者二人を捕まえるなんて、できっこないのだから」
こうして、私とヴィルフィールの旅が始まったのだった。
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