第11話 ミスティア、折れる

「ミスティア、私は邪魔しませんから」

「嫌だ嫌だ!私がいつも安眠できないのはあんたのせいじゃない!」


ヴィルフィールは優しい笑顔でミスティアを嗜める。

ミスティアは、よくもそんな顔ができるなというふうにヴィルフィールを睨みつける。

すると、彼はこういった。


「分かりました。ミスティア、貴女にかけた呪いは解きましょう。……ですが、私はミスティアとずっと一緒にいますからね」

「うぅ、それくらいならいいわよ。でも、絶対に私の睡眠を邪魔しないでね!」


そうして、結局ミスティアが折れたのだった。



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ミスティアがヴィルフィールに呪われたのは十六歳の誕生日の時だ。

その時の夜会で、ミスティアはヴィルフィールに一つ、祝福を授けられるはずだったのだ。

だが、ヴィルフィールはそれをとしてミスティアに授けた。

そのせいで、ミスティアは夜眠れなくなり、残業三昧だったのだ。

ヴィルフィールはミスティアが眠れないと泣きついてきた時に、嬉しそうな顔をして悪びれもせずにこういったのだ。


『ミスティアに呪いをかけたのは、私ですよ。

だって、ミスティアが眠れなければ、私を頼ってくれるでしょう?』


と。あの時初めて彼を殴り飛ばしたいと思ったのだ。


そんな思い出に耽っていると、ヴィルフィールの冒険者カードを作ってもらうために冒険者ギルドに行こうとしていたミスティアに、ヴィルフィールはこういった。


「ミスティア、すみません。一つ、言い忘れていたことがありまして……」

「え、なに?」

なぜか少し気まずそうにしていたが、やがて決心したのかこう囁いた。


「私といると、神から受けている加護が全部使えなくなってしまうんです。今までは一柱しか神はいなかったので別に大丈夫だったんですけど……。こっちの国は神どもがうじゃうじゃいるので……。気をつけてください」



「………ぇ?」


少し、まずいかもしれない。

ミスティアは別に大丈夫だが、加護が使えないということは、ミスティアの近くにある神具も使えなくなってしまう可能性が高い。

それは非常に困る。


「え、でも、神具は?大丈夫なの?」

「それは大丈夫です。使えなくなるのは加護だけですから」


冷や汗をかいたミスティアだった。

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