第9話 ミスティア、違和感を感じる。
「ヴィルフィール、貴方は何故私を絶望の底に叩き落とそうとするの?」
「心外ですね。私にはそんな記憶はないですよ」
そんなはずはない。ヴィルフィールは私が何か幸せだと思った瞬間私を絶望に落とそうとする奴だ。
記憶がないとか絶対嘘だ。
「……私は7賢者だったのよ。今更7賢者に戻ろうなんて思わない。…まあ、スロウスは返さないけど」
「まあ、ミッドナイトの性じゃなくなれば、貴女はただのミスティア・スロウスです。それに、今のところ次のスロウスは現れてませんしね」
スロウスとは、7賢者の一人である怠惰の称号を持つものに与えられる。
強欲の称号を持つものであればグリード。色欲の称号であればラスト。と言ったふうに授けられる。
その称号は、それぞれの性格や相性によって決まる。
7賢者は、生まれた時から7賢者だ。私も生まれた時から7賢者だった。
何故かわからないけれど、私はミッドナイトという名前ではないという感覚があった。
7賢者は頭が飛び抜けて賢く、身体能力も普通の人間より飛び抜けていい。
そのほかは、魔力が無尽蔵に多かったり、普通の人間であれば死ぬような怪我などもすぐに治る。
しかも、何も食べずに生きていける上に病にもかからない。
ほとんど不死身と言っても過言ではない。
ミスティアは自分が7賢者の一人であることを、魔導師になった時に知った。
ミスティアは7賢者の中でも強い方だ。
そのため、弱い魔物でもSランク以上の魔物でも倒せる。
勝てないのは自分より強い7賢者だけだ。
「私、7賢者があんなに大変だなんて知らなかったわよ!王宮魔導師の頃はあんまり残業とかなかったから大丈夫だったけど!!7賢者になってから私、一回も休みを取れてないの!わかる!?毎日毎日仕事場に泊まりという地獄!私は家でごろだらしたいのーーーっ!!」
思わず叫んでしまう。
ヴィルフィールの方を見ると、彼は少し驚いているようだ。
「ミスティアはやっぱり怠惰の賢者ですね。今までの怠惰の賢者も同じような感じで辞めたいと呟いていましたから」
「え、そうなの?」
と呟いてから少し、違和感を持つ。
彼の言った言葉のどこかに違和感があったように感じられたからだ。
「……ヴィルフィールは、いったい何歳なの?」
「前に言いませんでしたか?私は二十五歳ですよ」
彼の答えを聞いても釈然としない。
何か、見逃してはいけない何かがあったような。
だが、ミスティアは面倒くさくなり、思考を閉じた。
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