第8話 ミスティア、秘密をばらされる

「ヴィルフィール。なんでここにいるの」

「ひどいですね。私はミスティアを追ってきただけなのに」


そういう問題じゃない。

そう突っ込みたかったが、やめておく。


彼はヴィルフィール。ミスティアの同僚であり、ミスティアの悪友。

そして、ミスティアのストーカーでもある。

ミスティアは、こいつが自分をストーカーしていることを知らなかった。


極端な話、ヴィルフィールはミスティアよりも強いのだ。


ちなみに、ミスティアがこいつと会いたくなかった理由は、とても単純である。

それは……


「あんたがいると!私が貞操の危機に陥るでしょう!?」

「手っ取り早くつながるためにはそれしかないでしょう?何故拒むんですか。私は貴女のことを愛しているのに」

「それが嘘っぽいって言ってるじゃない!」


彼がいると、ミスティアの貞操の危機に陥るからだ。

ヴィルフィールは、ミスティアのことを手に入れようとしていつも撃沈している。

はじめ、彼は良き先輩だった。

頼れる良い先輩だった上、とても話しやすく優しい先輩だった。

ただ、二年後にそれは猫をかぶっていただけだったと知る。

ミスティアと彼の階級が同じになった途端豹変した。

ヴィルフィールは人目も憚らず、ミスティアに告白したり抱きついたりするようになった。

ヴィルフィールの性格はおかしくとも、見目は麗しいために女性は彼の虜になっていた。そのため、ミスティアはいつも色々な女性から目の敵にされていた。

慣れたが。


そんなことはどうでもよかった。

ミスティアは、心の安寧として怠惰な生活を望んだのだ。

それなのにヴィルフィールが出てきて仕舞えば台無しだ。


「ヴィルフィール、今すぐ帰って。今は貴方がいるとまずいのよ」

「そうでしょうねえ。私が国からいなくなったとすれば、あの国は破滅に一直線ですから。……ですが、それはミスティアにも言えることなのですよ?」

「……何が言いたいの」


嫌な予感がする。

こいつは、顔はいいが性格はねじ曲がっている。

おまけにドSだ。こいつが微笑む時は、大抵一番口に出してほしくない情報を滑らせるときだけだ。

今回は不運なことに、そのパターンだった。



「私はあの国の7賢者ですが、それは貴女にも言えるからですよ。

……ミスティア・スロウス公爵閣下?」



こいつは、何故私を絶望の底に叩き落とすのが好きなのだろうか。

本当に理解に苦しむ思考である。

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