第7話 ミスティア、親友に会う
ミスティアは冒険者ギルドの中に入ると、カウンターらしき場所に行ってみた。
そこで、登録ができるらしい。
「あの、冒険者登録をしたいんですけど……」
「かしこまりました。では、この用紙に名前と職業を書いてください。魔法が使えれば、使える魔法を書いてください」
「わかりました」
そう言い、ミスティアは自らの名前や使える魔法、技術などを書き込んでいった。
一通り書き終わると、受付の人に渡す。
一瞬受付の人は顔を顰めたが、すぐに笑顔に戻りミスティアの前に水晶玉のようなものを出した。
「この水晶に手を触れてください。犯罪経歴がないかを調べます」
「はい」
そう言われて手を置くと、その玉は青色に光った。
多分これは前科なしという意味だと思われる。
受付の人に「もういいですよ」と言われて手を離す。
「はい。登録完了しました。このカードを必ず持ち歩いてくださいね。身分証にもなりますから。説明はいりますか?」
ミスティアは少し迷ってから、こう答えた。
「いえ」
「では、あちらのボードに依頼が書かれていますので、受けたい依頼を受付に持ってきてください。初めは、自分と同じランクの依頼を受けるといいですよ」
「ありがとうございます」
そうして、ミスティアは依頼の貼られたボードに目を向け、早速討伐依頼を探す。
ミスティアはまだ一番下のGランクなため、それと同じランクか、一つ上のランクのものしか受けられない。
当然そんなランクに討伐依頼はなく、渋々薬草探しを選択した。
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ミスティアは森の中を歩く。
目当ての薬草は森の深いところにある。
「そう言えば……あいつは大丈夫かなあ」
ふと気になったのはミスティアの同僚のことである。
彼はミスティアの悪友である。そのためか、トラブルを持ってくるタイプの人間だった。ミスティアは彼の性格が少し苦手だったが、やはり親友ということには変わりはなかった。
しかも、そんな奴なのになぜかモテていたというのは疑問しか浮かなかったが。
傍目から見ればミスティアに依存していた彼だが、当の本人は気づいていない模様。知らないほうが幸せということだろう。
そんなミスティアだが、別に隣国に逃げようと思っていたわけではない。
本当はもっと遠くに逃げるつもりだったのだ。
原因は、この森にある。
(なんかきな臭いんだよなぁ、この森。あそこは本来Aランクの魔物が出る場所ではないし。誰かが操ってた可能性だってあるし、っていうか無茶苦茶嫌な予感してるし……)
ミスティアが思考に没頭しようとしたところで、突然誰かの気配がした。それは背中から感じ取れた。
ミスティアは、後ろをゆっくりと振り返った。
ミスティアの嫌な予感は当たるのだ。
案の定、そこにはミスティアの今絶対会いたくない奴がいた。
「……久しぶり。ヴィルフィール・グリード。なんで私がここにいるってわかったの?」
ミスティアの後ろには、ミスティアの同僚が嬉しそうに歩いてきていた。
いくら悪友でも、いくら親友でも、今は絶対に会いたくなかったのに。
この男は、悪魔のような笑顔でこう返してきた。
「私がミスティアに監視精霊をつけているのですから、ミスティアの居場所がわかるのは当然でしょう?」
こいつは頭のネジが3、4本吹っ飛んでいると、今更ながらに思うのだった。
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