第3話 ミスティア、人を助ける

ミスティアは、空を飛んでいた。

昔開発した魔法で、空を飛べたらいいなという思いから使えるようになった魔法だ。これが結構便利で、歩かなくともいいから楽でいい。

ミスティアは今、高速で飛んでいるので、下の人間からは見えないだろう。まず、高度も高いので、普通の人間ならば見えるはずがない。

すぐに国境が見えてきた。国境は森となっており、よく魔物討伐に出向いたところもある。

懐かしいと思いながらも空を飛んでいると、火が見えた。

気のせいかと思ったが、確かにそこに火の魔法を使っている人間がいる。

その風貌から、冒険者のようだ。

交戦中のようで、魔物にその魔法を打っている。


「あの魔物は……Aランクかな?」


その冒険者が戦っていたのは、Aランクの魔物で、そこそこ強い魔物だ。

魔物は、ランクで分けられている。

一番弱いのはGランクで、次がFランク。その次はEランクというように、強さで分けられている。一番強いのは、災厄とも呼ばれるZランクの魔物だ。

Zランクの魔物はそうそうお目にかかれない。

かく言うミスティアも、三回くらいしか会っていない。ミスティアの場合、その魔物と仲良くなってしまったが。

倒そうと思えば倒せるのだ。

つまり、Aランクの魔物はミスティアからすれば雑魚と同じようなものだが、普通の人間からすれば十分脅威だと言うこと。

人間のステータスを見てみたが、Aランクの魔物と渡り合えるほど強くない。

仕方ないので、助けることにしようと思う。


「もう、Aランクの魔物なんて知能があるんだから話し合えば解決するのに」


なお、こう思っているのはミスティアだけである。


_______________


一方、その冒険者たちは。


「くそっ!強すぎる!なんなんだこの魔物は!?この辺はCランクまでしか出ないんじゃなかったのかよ!?」

「そんなの知らないわよ!この魔物、多分Aランクよ!強すぎるもの!」

「Bランクまでしか俺らは倒せないってのに、どうやって倒すんだよ!?」

「話してる場合じゃねえ!とにかく逃げるぞ!」


逃げると言った男の腕は、もう限界であった。

剣は振れない。

足もほとんど動かず、自らが囮になるしかなかった。


「くそっ!お前ら、よく聞け!俺が囮になるから、その間に逃げろ!」

「あんた、まさか!を使うとか言わないわよね!?」

「ああ、そのまさかだよ!」


その男が囮になる。それしか方法はなかった。


「わ、私が皆さんを癒します!なので、逃げましょう!きっと、リーダーも覚悟を決めています!それに、私たちだけでも逃げ切るんです!ここで全滅なんて、笑えませんよ!」

「で、でも!」

「いけ!早く!お前ら三人は、俺が死んだと報告しろ!だから!」


その男は、最後の力を振り絞り、剣を握る。

剣を持つその手は…震えていた。


「………っ!わかったわよ!」

「必ず、お前の死は無駄にしない!」


三人は、逃げようとした。

その時だった。

鈴の鳴るような、美しい声が響いた。


「美しい友情ね。真似したいとは思わないけど」


その瞬間、Aランクの魔物が………凍った。


「「「「……ぇ?」」」」


そして、Aランクの魔物の前にその声は降り立ち、こう言った。


「助けに来たよ。そこの四人、大丈夫だった?」


冒険者の四人は、目の前の光景が信じられなかった。

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