オーバードーズ

見慣れた紺色の箱を脱がせてやる。

露わになった瓶。今夜はこの子達と旅に出る。

机上に並べた30錠。お供は水道水。

別に死にたいわけじゃない。だからたったの30錠。

ただ、快楽に甘やかされたいだけなのだ。

じゃらじゃらと音を立てて、錠剤を胃の中に流し込む。

そして、旅に出るのをベッドで横になって待つ。

ゆっくりと、旅立ちの兆しを感じる。

そばに置いておいたスマホとイヤホンを手に取る。

私は、旅にためのプレイリストを用意している。

感受性が馬鹿になった今、音楽なんて聴いたら涙腺が崩壊するだろう。

予感は的中、チープな応援ソングに涙してしまった。

私は今、旅に出ている。生き地獄からの脱獄の旅だ。

しかし、旅には困難がつき物だ。

旅によって得られる物は快楽だけではない。

快楽に宙ぶらりんの私を、悪夢が待っている。

副作用には抗えぬ。リスクつきの旅だ。

今日の夢は何だろう。

臓物を全て抉り出される夢だろうか。身体が潰れる夢だろうか。

なんにせよ、私の旅は、終わりに近づいている。

私の人生は、まだ終わらないが。

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