ソラを夢見る少女

サンライズ

ソラを夢見る少女

ここは今は失われた技術により浮いた島が無数に存在するセカイ


私の父はソラの魔法使いと呼ばれている人たちの一人だった


ソラの魔法使い達は自力で他の浮島に行くことができる人たちのことだ

私にはそれが自由だと感じた

だから私はソラに行きたい

そして自由に旅をして父親を連れ戻す

そう伝えると話を聞いてた祖母はいつも可哀そうなものを見る目でこう言った



ソラの魔法使い達は決して自由ではないソラには翼竜たちがいるし

別にほかの浮島に買い物に行きたいのならソラの魔法使い達が昔協力してくれて設置したゴンドラに乗れば行ける

生きていて困ることはない

決してお前の父のように私をおいて先にいかないでくれ

お前の父は私を置いていきソラの魔法使い達の墓場へと連れてかれたのだから



幼い当時の私にはそれがお前には才能がないから諦めなさいと言われているようで悔しかった

しかし現実として私にはソラの魔法使いとしての才能はなかった

精々が物を押すくらいだ


それでも私は諦めることが出来なかった

既に亡き祖父が使っていた倉庫に引きこもり空に飛ぶための道具の開発にいそしんだ

夏も冬も朝も夜も関係なく五年間ずっと

そしてついにそれは完成した

ソレは手と足の間を膜のような物でつなげられたスーツであった

膜の強度、推進機の小型化軽量化などに苦労したが落ち着いて考えれば自分自身を押せば上には行けずとも同じ高さならどうにかなるであろうと気づいたのだ


私は早速小高い丘で練習を始めた

来る途中に祖母を見なかったがどうやら知らないうちに逝ってしまったようだ

そうするとこのスーツに対してか私自身に対してか分からないが好奇の目で周りの住民が見てきた

初めは上手くいかなかったが慣れれば早いもので、ある程度使いこなせるようになった

その頃になると最後に見たころに比べ随分と大人らしい顔立ちになった年の近い少年達が近づいてきた



俺達はソラの魔法使いの才能がないのにお前だけソラに行くなんてずるいじゃねぇか

抜け駆けするんじゃねぇよ

そもそもお前みたいな家族殺しが粋がってもソラなんか飛べるわけねぇだろうが



彼らは何を言っているのだろうか

少なくとも私よりはソラの魔法使いとしての才能があるはずだ

だからこそ私は伝えた


『ずるいと妬むなら真似をすればいい』


これは私の本心だ

真似をされてもパクりだと喚く気もないし罵る気もない

しかし彼らにとっては違ったようで顔を真っ赤にして去ってしまった

努力する覚悟もプライドを捨てて人の真似をする事もできない意気地なしだと思った

その瞬間彼らへの興味は尽きそれと共にやはり祖母はもういないのかという現実に気付き命への未練をなくした


そうなると早かった、私は早速父親のように体をソラへと投げ出した

そうすると上から下にゆっくりと風が吹いているのか下へと緩やかに引っ張られる

しかしその些細な風がいけなかった私にできるのは高度の維持だ

そこに計算外の上からの力が加わればどうなるか

徐々に私の高度は下がり元の島へと戻ることは出来なかった


そうなるとすぐに戻ることを諦めた私はゴンドラのことも忘れ気になる島へと向かって進んでいった

そこは誰もいない無人島だったしかし大昔に人間が住んでいた形跡はある

一つだけ存在する集落があったのでその中で一際大きい建物に入ってみるそこには膝を抱えるようにした白骨が一人分その近くの床にボロボロになった手帳が


違う島でも同じ言語なのだろうかと思いながら開いてみると所々なまりがあるし一部私の島にはなかった文字が存在するが思いのほか読めた

それによると似たような集落が元々存在していてそのそれぞれが農業、畜産、絹織物等分業して支えあっていたという

そしてある日それぞれの一番偉いもの同士で集まって話し合いをおこなったそれは畜産、農業を司る集落がいい思いをしすぎているというものであった三日三晩話し合っても結果は出ずに最後には子供たちのようにムキになってそれぞれの集落の中心を少量の爆薬で亀裂を作り分けようという話になった

誰もそれを止めることができないまま実行にうつりそれぞれは独立した島となった

と思われた

しかし実際には互いへの依存度が高すぎすぐに衰退を始めた

私たちの島もここまでのようだあの時ちゃんと相手の話を聞いてお互いが譲歩をすればこうはならなかったのに


そこで手記は終わっていた

そう私は判断した

それ以上先を読みたくなくて

それ以上先を読めば再び命へ執着してしまうから



そして私は振り返ることなく新しい島へと向かった

似たようなことを繰り返していった

初めは確かに楽しんでた

しかしある程度降りると新しい島に降り立ちそこにあった痕跡や時には住人との触れ合いを通して何を学んだか何かを学べたかは分からないままただ現実から目を背けるためにとにかく繰り返すようになっていた

段々と気になった島ではなく見つけた島全てに行くようになった


しかしその日が訪れた


それより下に島がなかったのである

その代わり黒く蠢く何かがいた

島を点々としながら降りている途中に聞いた話によるとあれは大きな花であり非生命体を食べて育つそうだ

その為非生命体を引き寄せる謎の力を放っているという

なので浮島を浮島たらしめる古代の技術による謎の装置が劣化により出力が下がるとその力に引き寄せられ沈んでいくそうだ


私はそれを見た瞬間私は最後にこの無人島で過ごすのかと思うと怖くなった

幸い飲み食いには困らなかった

しかし日が経つにつれ一つの考えが頭から離れなくなっていった


『いつか死ぬなら生まれてこなければよかった』


そして遂にそんなことを考えることも嫌になりせめて次に来た人が困らないようにと思いほとんどの荷物をその場において下着姿で足元にある花に向かって飛んだ

しかしいつになってもぶつかることはなく恐る恐る目を開けると島が次々に後ろから前へと飛び出してきているのだ


私は意味が分からなかったが一つだけ分かったこれが夢にまで見た本当のソラか…と

しかしそこにはどこにも父の姿はなく上昇する体が止まる様子もない

段々息をするのが辛くなり頭痛が私をおそったお


ここがソラの魔法使い達の墓場であるのだろうと気づいた

そうして私は私を手放した

ソラの魔法使い達と同じで私の旅もここまでだから


_____________

ネタばらし

この花は非生命体を主食としています

なので非生命体を引き寄せ生命体を遠ざけます

主人公がはじめ下に引っ張られたのは非生命体つまり荷物の持ちすぎです

逆に最後は荷物を減らしすぎた為際限なく上に向かってしまいました

ソラの魔法使いの才能とは簡単に言えば自分自身にかけられるサイコキネシスです

ソラの魔法使い達はこれを使い自分を上下へ移動させていました

それに対して主人公は下への引力に逆らえるほどの才能がなかったため荷物を殆どおろす最後まで滑空のみを行ってきました

主人公はソラの魔法使い達の墓場を空気が薄くなっていくソラ高くだと勘違いしていますが正しくは花の中です

それはソラの魔法使い達の最後は魔力が切れ引力にあらがうことができず花に吸い込まれて行ってしまうか

逆に荷物が少なすぎてソラへと遠ざけられてしまい

意識を失ってから死亡し無機物として花へ吸い込まれるからです

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