第14話 実行委員とやら

「あーだりぃー。めんどくせー」

なんでこうなった…。教室にはほとんど人がいない。黒板には体育祭実行委員、森川秋次、結城永遠の名前が書いてある。


少し遡り、午前中の出来事だった。

担任の平田が入ってくると同時に黒板を叩く。

「よーし、体育祭の実行委員決めるからな」

「えー」

教室で騒めきが起きる。大方がやりたくない雰囲気なのだろう。

「だれか希望者って言っても、大体いつもの奴しかやらないからな。くじ引きにしたぞー。男子、女子一人なー!」


そして男子からくじが始まり、少ししたところで、東山が振り返り、指を指す。

「秋次は見てみー女子も盛り上がってるの分かるだろ」

「いきなりなんだよ?」

「岡田勇吾。うちのクラスでイケメンが次に引に行くぞ?見てみ?」

岡田が立ち上がりくじを引きに行くと、女子たちが目で追い、注目しているのが分かる。ハズレを引くと残念がっている。

「ほー。」

見ていると結城と目が合い、手を振ってきた。

「まったく」

学校では、そもそも人関わらないようにしてきた。結城を助けた件は例外だが、結城ともそれ以来学校で関わる機会もないのでお互い話す事もしていない。そのおかげか、学校での二人の関係については沈静化している。たがら、手を振られても無視するに限る。


「おーい。森川、お前の番だぞ」

「まだ決まらねーのか」

半分くらいは終わったようだが、まだ決まっていなかった。

「行くか」

秋次も女子たちがザワザワしているのが分かる。絶対一緒にやりたくないのだろう。やりたくないのは秋次も同じなのだが…。

「あ?」

色がついていた。

「男子は森川なー」

「マジかよ」

なんでこう面倒なことになるんだよ。


「次、女子なー」

平田が何事もなかったようにことを進めるが、女子からはちょっと無理、どうするの、やだ〜、などなど容赦ない文句が溢れている。

「めんどくせぇ…」

「よう、当たり」

「どうするんだよ、これ」

「はは、まあなるようになるんじゃない」

「他人事だな」

「他人事だからね」

「東、代われや」

「やだよ」

「まじかよ」

そんな話をしているうちに女子の方もくじ引きが始まった。

やだ、当たり?!と言う声が聞こえた。早々に誰かが当たったようだ。名前も覚えてない知らん人だが、どうやら嫌らしく平田に抗議している。

「くじ引きだから仕方ないだろ?」

どうするんだよ、他にいないのか、教室が騒ぎになり始めた。どれだけ嫌がられているのかよく分かる。やりたくないのだから降りるべきだ。

「おい!俺が降り」

「やります!」

秋次の声を遮るように、大きな声と手を挙げたのは結城だった。結城の顔を見るとまた小さく手を振っている。

「いいのか?」

平田が結城に確認をしているようだ。

「はい!やります!」

そう言うと結城は秋次のところに来て手を出す。握手をしようと言う意味らしい。

「よろしく!森川くん?」

「あ、ああ」

秋次は指一本だけだして、結城と握手?をした。

「じゃ、決まりなー」

黒板には体育祭実行委員、森川秋次、結城永遠の名前が書いてある。

「はぁ…めんどくせぇ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る