第12話 またまた面倒事か

石橋に着き、西村が入ってきた。話題が変わり秋次もほっとした。

「永遠、おはよう。あと森川も」

「おはよう。沙希」

「ああ。」

「ほんと朝は二人一緒なんだね」

珍しいものを見るかのごとく、西村は結城と秋次を交互に見ている。

「そうだよ。森川くんは負けたくないからみたいだけどね」

結城がいたずらっぽく秋次をみて笑う。

「ど、どう言うこと…」

「やめてくれ…」

朝から騒がしくますます面倒なことになりそうだ。


それから西村が秋次に聞きたいことがあるということで面倒だが相手をすることにした。

「森川って不良なの?」

「なんだそりゃ?」

「永遠から聞いてる限り、悪そうな感じしないからさ」

「さぁね。悪い事はあんまりしてねーよ。」

「あんまりって。なにしてんのさ」

「だいたい、柄の悪いやつが来るから殴り倒してるくらいか?」

これも面倒なのだが、一度絡まれて撃退するとそういう奴らに認識され、自分の実力を見せつけたいが為に絡まれる事が増える。とはいえ、秋次には篠原組、ジジイが居るのでやばい連中は手を出してこない。手を出す連中は大抵は無知な不良が多い。


「まじ?永遠も知ってるの?」

「あ、あはは。正当防衛?」

「お前ら仲良いんだな」

「そりゃ永遠とは小中も一緒だし、家も近いからね」

「私が小4のころ、引っ越してきて沙希が友達になってくれたんだ」

「へー」

「興味なさそー」

「いつもこんな感じ、森川くんって。でも、ちゃんと聞いててよく覚えてるんだよね」

「知らねえよ」

「そうなの?」

「この前も猫の話したんだけど、名前覚えてくれてたし」

「ほほう。森川って永遠に興味あるんだ?」

「は?猫の名前がへんちくりんだからだよ。茶田丸ってねーだろ」

「森川くん、ひどい。かわいい名前だよ」

「永遠、かわいい」

「なんなんだよ…」


その時、同じ学校の生徒がスマホのカメラをこちらに向けている気がした。そして、カメラで撮影する電子音が聞こえた。

「はぁ…」

秋次は大きなため息をついて、立ち上がる。

「ちょっと森川?なに?」

「森川くん?」

二人を無視して写真を撮った男子生徒の元に向かう。


「なあ、おい。テメェ、何勝手に写真撮ってんだ?」

「な、なんですか?」

「スマホ、見せろ」

「やめてくださいよ」

「写真撮ったの気づいてないと思ってんのか?」

電車の中がザワザワし始める。小声で盗撮?不良に絡まれてるの?など様々だ。

「そ、そんなことしてないですって」

「なら、見せてみろよ?あれば盗撮だからな?」

「いや、それは」

秋次はムカついていた。盗撮からの強姦目的の話を聞いているだけに、こういうので狙われたりしたら面倒だ。

「もうすぐ宇都宮に着くな。どうする?駅員に引き渡そうか?」

「あ、あんたにできるのかよ?どっちが悪いか分かるだろ?」

「てめぇ、開き直るつもりか?」

「森川くん!」

「んだよ?!」

「う…や!やりすぎだよ!」

結城が泣きそうになりながらも秋次を見つめている。

「あ、あぁ。悪かったよ」

秋次は結城に謝り、一歩下がる。

「あなた、隣のクラスの高山でしょ」

「1組の結城さん、西村さんだよね?この人なんなんですか?!」

「そうだけど、とりあえずスマホ見せて」

「あなたたちまでなんですか?!」

「じゃいい。駅員に言うから。」

「ちょっと待ってくださいよ。」

納得いかないのか高山が食い下がる。

「そこの不良を信じるんですか?一方的に言い掛かりつけてきて」

「ああ?」

「森川くん!ダメだからね!」

「わーったよ。」

結城が秋次の前に出てくる。先程の涙はどこへやら、結城はどうやら本気で怒っているようだ。仕方ないので、西村の様子を見ながら何かあれば容赦しないことにした。


「森川も悪いけど、本当に無実ならスマホを見せてくれたらいいと思うけど?」

「しっ知らない!」

そう言うとタイミングよく宇都宮駅に着いて、扉が開くと同時に高山は外へ飛び出した。

「待ちなさいよ!」

「おい!西村!」

しかし高山は逃げられなかった。なぜなら、駅員が待ち構えていたからだ。どうやら騒ぎになり連絡されたようだ。

「君たち、ちょっと来なさい」

「めんどくせぇ…」

どうやら今日もまた面倒なことになりそうだ…。

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