第8話 次から次へと

「はぁ…なんなんだ…」

教室に入った途端、全員の視線が秋次に注がれていることがわかった。まず間違いなく朝の電車での出来事によるものだろう。


あの後、結城は秋次から離れて西村と合流していた。誤解されても面倒なので、少し時間を潰してから教室に来たのだが、あまり効果はなかったようだ。

「あ、あんたね!」

秋次の顔を見るなり西村が勢いよく近づいてきて、怒鳴る。

「あ?」

「沙希、違うんだって!」

後ろで結城が止めようとしているが止まる気配はない。

「何が違うのさ!これ!見て!」

「んだよ」

西村のスマホを見ると結城が秋次に頭を下げている写真が映っていた。

「なんで永遠があんたに頭下げてんのさ」

「あー。」

教室中の視線が西村と秋次に集まる。まさか写真撮ってる奴が居たとは…面倒な事になってきた。


「めんどくせぇ…」

秋次はこんな時は逃げるに限ると思い、席を立ち上がる。しかし、西村が逃すまいと目の前に立ちはだかる。

「おい、あいつ西村に手を出すんじゃね?」

「だれか先生呼んで」

教室が騒つきはじめ、手に負えなくなってきた。

「待って!だから、違うの!」

結城が大声で叫ぶ。その瞬間に教室が静まり返る。

「えっと…森川くんは私を不良から…襲われそうになってた時、助けてくれたの!」

「え?永遠?」

「昨日、沙希が帰ってから一人で帰ったんだけど、途中で男の人たちに襲われたの。そしたら森川くんがやっつけてくれて。昨日、ちゃんとお礼言えてなかったからちょうど電車で会えたから…」

「まじ?」

西村が確認の意味を込めて秋次を見るので、頷くことにした。

「あたし、やっちゃった?」

「ご、ごめんね、沙希。もっと早く話したかったんだけど、ちょっと話しずらい内容だったから…森川くんもごめんね?」

結城が申し訳なさそうに手を合わせて謝る。

「ああ。」

「森川!ごめん!勘違い!」

西村も頭を下げて謝るが、その後ろから担任が入ってきるのが見えた。秋次は早くこの状況から脱したかった。

「もういいから」


「もういい訳ないだろう?」

その声に悟った。既に遅かった。担任の平田が事情を聞いたようでまた面倒な事になりそうだ。

「森川、結城、ちょっと職員室に来い!」

「はぁ…めんどくせぇ…」

秋次は今日は一日が長そうだと思い、ため息をついた。

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